<公開中の『わたしの知らない子どもたち』は僕の期待とは違い、正攻法にすぎて物語がうねっていない>
この連載で西川美和監督の『永い言い訳』を取り上げたとき、過去作の『蛇イチゴ』や『ゆれる』も挙げながら、「とにかく圧倒された」と僕は書いている。
べた褒めだ。もちろん『永い言い訳』も絶賛している。
ポイントは破調と乱調。西川は映画にこの要素をちりばめる。その帰結として、登場人物への安易な感情移入を西川は拒絶する。人はあくどいと同時に切ない。冷酷なのに優しい。相反する要素がきしみながら絡み合って物語を紡ぐ。
その『永い言い訳』から5年後に西川は『すばらしき世界』を発表し、その5年後の今秋(10月16日)に新作『わたしの知らない子どもたち』を公開する。
基本的に西川は自ら原案や脚本を書いて監督する。佐木隆三の小説『身分帳』を原案にした『すばらしき世界』の評価について質問されたら、僕は「うーん」と首をひねるはずだ。微妙。なんだろう。手足が縛られた感じ。破調と乱調が抑制されてしまった。息遣いが足りない。無理に言葉にすればそんな感じだ。
その西川が戦災孤児をテーマにした作品を撮っていることは、かなり前から知っていた。もちろん原案も脚本も西川自身。ならば期待できる。かなりの大作であることも耳に入っていた。ようやく観ることができた。