私が戦場における民生ドローンの軍事転用を目撃したのは、2016年10月のイラク北部モスルでの「イスラム国」(IS)との攻防戦だった。
モスルを占領するISは対峙するイラク軍やクルド人部隊に対して、中国製ドローンDJIの「ファントム」やパロット社製の機体に投下装置を付け、手製の小型爆弾や手榴弾を上空から投下していた。モスル市内では絶えずドローンのモーター音に注意し、発見されないように軒下や遮蔽物に隠れなければならなかった。
この時、「貧者の武器」と揶揄されていた民生ドローンが、後に兵器として飛躍的に進化を遂げることになるとは思わなかった。
私は22年5月からこれまで計9回ウクライナ戦争を取材し、戦場における兵器としてのドローンの進化を目撃し続けてきた。開戦初期に従軍したウクライナ軍・ジョージア部隊では、操縦者の位置を把握できなくするようソフトウエアを改造したDJIの「マビック3」が偵察用に使用されていた。
その後、ウクライナ軍ではマビック3を砲撃観測として使い、旧式の榴弾砲でも正確にターゲットを捉えることが可能になった。
ロシア軍が第3世代の戦車T90を投入していたのに対して、ウクライナ軍の主力戦車は冷戦時代のT64やT72だったにもかかわらず、マビック3による監視と砲撃観測でロシア軍に打撃を与えることができた。
ウクライナ軍のドローン戦術の大きな転換期になったのが、23年のドネツク州バフムート攻防戦だった。激しい消耗戦の結果、バフムートの支配権を失ったウクライナは、この時期以降にアメリカからの武器支援を停止され、戦力の不足を解決すべくドローンに活路を求めた。