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スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

今年最後の運試し?なんとも意外なスペインのクリスマス文化

©︎Shutterstock - OSCAR GONZALEZ FUENTES

もう2023年も終盤を迎えクリスマスの時期ですね。去年のブログでは1月6日まで続くスペインのクリスマス文化について紹介しました。日本とは全く異なるスペインのクリスマス文化ですが、今年も去年に引き続きスペインのクリスマスには欠かせない意外な習慣を一つ紹介したいと思います。

 

スペイン版年末ジャンボ宝くじ

スペインのクリスマスに欠かせない意外な習慣、それは宝くじを買うこと。日本でいう年末ジャンボ宝くじのように「今年最後の運試し」的な意味で販売されるこの宝くじですが、驚くのは国民の参加率。なんとスペイン居住者の約8割が毎年一攫千金を狙ってこの宝くじを購入すると言われているのです。この宝くじはロテリア・デ・ナビダという名前で、ロテリアはスペイン語で「宝くじ」、ナビダはスペイン語で「クリスマス」を意味するのでロテリア・デ・ナビダは「クリスマスの宝くじ」という意味になります。抽選会はクリスマスを目前に控えた12月22日に行われるのですが、この抽選会の様子はテレビで生中継され、宝くじを購入した多くのスペイン人たちが自分の番号が読み上げられることを願いながら中継を見守るのが毎年恒例行事となっています。

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©︎Shutterstock - FrankShot

  

みんなで分け合う喜び

このロテリア・デ・ナビダ、宝くじ券1枚の値段が200ユーロと少しお高め。そのため1枚の宝くじ券を10等分にしたデシモと呼ばれる券が20ユーロで販売されており、大半のスペイン人がこのデシモ券を購入します。購入する値段が10分の1なので賞金ももちろん10分の1になってしまうわけですが、そのシステムを利用して家族や友達、会社仲間などと一緒に同じ番号のデシモ券を購入するというのも、ここスペインではよく目にする宝くじの楽しみ方です。購入後には「もし当たったらどうやって使う?」と盛り上がり、抽選会の様子を「うちらの番号当たるかな?」と仲間らとドキドキしながら見守るというこの宝くじ文化は、実に社交性のあるスペイン人ならではなのではないかと思います。友達付き合いの多いスペイン人はこうしていろんな人と番号をシェアするので、一人あたり毎年平均71ユーロを宝くじに賭けるのだそう。カスティージャデレオン州は国内でも最も宝くじに賭ける額が多いとされており、一人当たりの平均額は113ユーロとされています。ちなみに1等賞金は4百万ユーロ(約6億円)。デシモ券で当選すると、賞金は10分の1の40万ユーロ(6000万円)となります。

 

特徴的な抽選会

12月22日午前9時から始まるこの抽選会。大と小のガラガラ抽選機が設置され、大きな抽選機には番号、小さな抽選機には賞金額が書かれた木製のボールが入っています。抽選は2つのガラガラを同時に回し、出てきた番号と賞金額をマドリードのサン・イルデフォンソ学校の生徒が決められた音楽に合わせて読み上げるのです。賞金額までもガラガラで決められるので、一等賞がいつ出てくるか分からないのが面白いところ。賞金額が書かれたボールがなくなるまで続くので抽選会は約4時間の長丁場になるのですが、なんとこの抽選会の生中継はまるでスポーツ放送のように実況まで行われるんです。

今年の一等に選ばれた番号は「88008」。その瞬間の動画はこちらです。耳に残る宝くじの音楽をぜひ聞いて見てください。

 

よく当たる売り場には行列が

日本でもよく当たる宝くじ売り場には行列ができますが、それはスペインでも同じ。特にマドリードの「ドーニャマノリータ」という名前の売り場はスペインで一番有名な宝くじ売り場で、毎年秋ごろになると週末には宝くじを求めた人々が全国から押し寄せ、交通整備が必要になるほど店の前に行列を作るのです。ドーニャマノリータが開店したのは1904年のこと。女性が働くことが珍しかった時代、マノリータさんのお店は開店してから数年はなかなか商売がうまくいかなかったそうです。なんとかして当選者を出したいと考えた彼女は、スペイン人を守っていると言われるピラール聖母が祀られているサラゴサ市にお祈りに足を運びました。それからというものドーニャマノリータで販売された宝くじ券は次々と当たるようになり、開店からこれまでの119年間でドーニャマノリータは80回以上の1等当選者を出しているのだそうです(今年も一等がこのお店から出ました)。歴史的だったのは2019年。なんとこの年のロテリア・デ・ナビダの1等1本、2等1本、3等1本、4等2本、5等3本がこの小さな販売所から出たのだそう。ここまで当たるとなれば、スペイン中から人が押し寄せるのも頷けます。

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ドーニャマノリータに並ぶ人々©️YouTube -Ciudadanos esperan hasta "cuatro horas" para conseguir su décimo en 'Doña Manolita'

毎年スペインのクリスマスを盛り上げているロテリア・デ・ナビダ。当たった人も当たらなかった人も、24日25日は家族で集まり食べて笑って楽しい時間を過ごします。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

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