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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

ラマダンをきっかけにイスラム教に触れる取り組み

 さまざまな文化や宗教に触れる機会が多いこの国でも、ラマダンはずいぶん知られている方だと思う。たとえば、ラマダン・ライツのずっと前、2006年から、ロンドン中心部のトラファルガー広場でラマダンの終了を盛大に祝うイードが開かれて話題に上っていた。食べ物の屋台やライブ音楽のある賑やかなお祭りで、約2万5000人が参加すると言れいる大きなイベントだ。主催者であるロンドン市長を現在務めるサディク・カーン氏自身がムスリムということもあって、最近はますます熱が入っている。今年のイベントは4月22日だ。

 ラマダン中は、英国各地で大規模なイフタールも開催される。イフタールは、断食が終わった日没後に家族、親戚や友人たちと一緒に摂る食事のことだ。実はモスクが開くラマダン中のイフタールには、ほとんどの場合、宗教を問わず、誰でも参加することができる。とはいえ、イスラム教徒でない者がモスクに入るのはちょっと敷居が高い。チャリティー団体のラマダン・テント・プロジェクトが開催するオープン・イフタールという取り組みでは、観光に訪れるような英国各地の名所をイフタールの会場にしている。キリスト教の教会や英国を代表する歴史的な建物にイスラムの祈りが響き、床にどっしり座った人たちに食事が供され、場所によっては音楽やパフォーマンスも楽しめる。一度に1000人集まることもある。

 会場の例を挙げると(それぞれリンク先の写真や動画が見られます)、16世紀に建てられたケンブリッジのキングス・カレッジ・チャペル、中世の趣が感じられるマンチェスター大聖堂、第二次世界大戦の空襲による廃墟も残されるコベントリー大聖堂、ロンドンでは、服飾や装飾品のコレクションで名高いヴィクトリア&アルバート博物館、マグナカルタ(大憲章)が展示されている大英図書館、1930年代の煉瓦造りの発電所をショッピングモールに改装したバタシー・パワー・ステーション、プレミア・リーグのチェルシー・フットボールクラブのスタジアム、サッカーの聖地と呼ばれるウェンブリー・スタジアムなどなど。

 こうして名前を並べると、英国やロンドンを観光しているかのような名所ばかりだ。目立つ場所での開催が話題になればイフタールが知れ渡るので、団体では積極的に新しい会場を開拓していて、今年も数か所で初めてイフタールを催した。床にずらりと並んで食事をする参加者たちの様子はSNSでも積極的に発信される。どの会場でもみんなわいわい楽しそうで、写真や動画を見ていると仲間に入りたくなる(来年は行ってみたくて、今からうずうずしている)。

テムズ川沿いのヘイズ・ギャラリアで開かれたオープン・イフタール。ヘイズ・ギャラリアは、19世紀に茶や乾物の積み下ろし場として栄えた波止場や倉庫をモダンに再開発したエリアだ。今ではオフィスや店舗の入った観光地にもなっており、近くにはロンドン・ブリッジ、タワー・ブリッジ、ロンドン塔、高さ310メートルのモダンなザ・シャードもある。

 オープン・イフタールももちろん、宗教に関係なく、誰でも参加することができる。団体によれば、実際に参加者の約40%がイスラム教徒ではないそうだ。ラマダンの断食の後に楽しむ夕食は、本来、家族や友人との大切な時間でもあり、イフタール自体に人を迎え入れて親しくなる雰囲気があるそうだ。今年で10年目を迎えたこのイベントでは、その場の温かさを感じながら、宗教も出身も忘れて慣れた環境からお互いに一歩を踏み出し、みんなと友だちになろうと呼びかけている。

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館では、オープン・イフタールが食事を用意したほか、カラフルなラマダン・パビリオンが準備されて金曜のお祈りが行われた(イスラムの歌声の切ない響きが大好きだ!)。手話通訳がついて多様性への配慮が感じられる上、このパビリオンの素材は生物分解性で地球にやさしい。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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