「突然キレる」毒親のトラウマに苦しんだ男性が、「逃げない時間」を過ごし人生を取り戻した方法
インターネットで知った心理的コーチング
彼女の両親とは何度も顔を合わせており、井上さんをとても可愛がってくれていた。特に彼女の父親は、親しみを込めて、「秀人」と呼び捨てで呼んでいたのだが、井上さんの父親はそれが気に入らなかったようだ。
「何で俺の息子を呼び捨てにするんだ!」
突然、激昂した井上さんの父親は、周囲が驚きのあまり言葉を失うほど、1人でひたすら暴言を吐き、彼女の両親を罵倒し続けた挙句、「ふざけんな! やってられるか!」と言って家に帰ってしまった。(149ページより)
先方の両親が「気にしなくていいよ。水に流そう」と理解してくれたため、なんとか結婚できたが、以後も父親はことあるごとにキレては暴れ、やがて井上さんは実家に帰らなくなった。そして、飲酒の機会と量が増えていった。
そんな中で救いになったのが、インターネットで知った心理的コーチングだった。コーチングを受けることで、生まれて初めて自分自身や家族、仕事や過去に向き合い、「逃げない時間」を過ごしたのだ。それは「自分軸」を見つける作業だったという。
「自分の強みや弱み、コンプレックスや好きなこと、嫌いなことがわかりました。喜怒哀楽を感じることができるようになり、僕の『価値観』が炙り出されると、これまで抱えていた悩みが解決できました。その上で、自分の人生における目的や役割まで見つけることができたのです」(154ページより)
なお父親は飲酒して転んで頭を強打し、そのまま認知症を発症。母親が在宅で介護していたものの誤嚥性肺炎を起こし、63歳の若さで亡くなった。
一方の井上さんは現在、高校3年生、中学2年生、小学2年生の3人の子の父親。妻とは、週に1度は2人きりで出かけるほど仲がいいそうだ。長く闘い続けてきて、ようやく安心できる環境に行き着くことができたのだろう。

『「毒親の連鎖」は止められる――トラウマの呪縛を克服した10人のケース』
旦木瑞穂 著
鉄人社
(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)
【関連記事】
増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
「私はエリートだから農協に落ち着いたのは忸怩たる思い」団塊ジュニアのしくじり人生
ながら運転で前科、信号無視で6000円、「逆走」は?...どんどん厳しくなる自転車の交通違反
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
アマゾンに飛びます
2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら





