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荒川河畔の「原住民」(27)

「今がチャンス」ホームレスになるため、40歳を過ぎて大阪から上京した男性

2025年4月11日(金)18時05分
文・写真:趙海成

宇海くんは43歳だが、少年のような遊び心を持っている

宇海くんは43歳だが、少年のような遊び心を持っている(写真:本人提供)

母親の自殺未遂の後、両親はともに生活保護を受けていた

自分自身の状況が悪い上に、家族にもまた不吉なことが起きた。

親同士のケンカが原因で、母親が川に飛び降りて自殺しようとしたのだ。幸い川の水が浅かったので、母親の命は救われたという。

その後、母親は生活保護を受け、福祉施設に入所し、心身が一応落ち着いた。父親も生活保護を得て、以前のアパートでどうにか平凡な暮らしを送るようになった。

そして半年前、父親から連絡があり、母親と離婚したことを知らされたという。

それを聞いた宇海くんは、良い結末として受け取った。

「生活で両方疲れてたので、それやったらもう別れたほうがええやんって」

以前から彼はずっと、両親の生活や彼らの関係について心配していたと同時に、自分の将来の行方に戸惑っていた。今では両親について心配する必要がなくなり、自分が解放された感じになったという。

ようやく行きたいところに行き、やりたいことをやれるようになった。

宇海くんは昔から、ホームレスに対して見下すことはなく、路上生活に対する抵抗もなかった。むしろ、いつか自分もホームレスになってみようと思っていたという。

今、そのチャンスが来たのだ。

そういうわけで、彼は40年以上住んできた大阪に別れを告げ、まだ見知らぬ東京に向かった。

憧れの師匠を目指して河川敷を歩き回った

大阪を出る前に、東京のホームレスに関してインターネットでたくさんの下調べをした。

その中でも、YouTubeで荒川河川敷のホームレスの生活を記録した動画や、ヤフーで公開されたこの連載「荒川河畔の『原住民』」の記事が、宇海くんに大きな影響を与えた。

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