最新記事
日本政治

岸田続投を占う日本政治における2つの「サバイバル指標」と2つの「起死回生策」

Can Kishida Hold On?

2024年8月6日(火)20時20分
シャムシャド・A・カーン(ビルラ技術科学大学ピラニ校助教)

議員に党員・党友を含めた第1回投票では、岸田がトップの256票を獲得したが、過半数には届かなかったため、岸田と河野の2人で決選投票が行われた。ここで岸田は257票を獲得し、170票だった河野に圧勝した。

いわば岸田の忍耐と「模様眺め」の戦略が功を奏した格好だ。岸田は臨時国会を経て、21年10月4日に首相に就任した。

だが、当初から内閣支持率は振るわず、これ以降も30%を超えるのは難しかった。

その原因は、外交面では大きな成果を上げているものの、内政面では有権者に響きやすい政策を実行していないことにあるだろう。「新しい資本主義」により格差拡大を食い止めるという約束も実現できていない。


岸田は、党内保守派の支持を得て政権維持を図るため、憲法改正など安倍が掲げたタカ派路線を踏襲したが、少子化対策や北朝鮮の拉致問題といった長年の懸案には取り組めていない。この領域で成果があれば、支持率はもう少し上昇していたかもしれない。

ただ、7月11日に発表された時事通信の世論調査に見られるように、最近のさらなる支持率低下は、自民党派閥の裏金事件の影響が大きい。

このピンチを乗り切るため、岸田は党内派閥の廃止を決断。まずは自らの派閥の解散を発表して、各派に追随を促した。この措置は党内に大きな衝撃を与えたが、最終的には、麻生太郎副総裁の派閥以外は、岸田の呼びかけに従った。

今年6月には政治資金の透明性を高める改正政治資金規正法も成立した。それでも国民は納得しなかった。内閣支持率は低迷を続け、党内からも首相交代論がささやかれるようになった。

日本の歴代首相が支持率テコ入れのために講じる措置は2つある。

内閣改造と衆議院の解散総選挙だ。岸田は、23年12月に閣僚4人を交代させ、解散総選挙については今夏を検討していた。だが、4月末に行われた衆議院の3つの補欠選で自民党が全敗したことに危機感を覚えて断念した。

それでも党総裁選挙の準備は着々と進んでいる。既に選挙管理委員会が設置され、8月下旬にも選挙活動が始まる可能性が高い。

正式な出馬表明をしている人物はまだいないが、石破、高市、河野の3人が出馬をほのめかしている。今度の総裁選の焦点は、次の総選挙で誰が党を勝利に導けるかだ。

世論調査では、国民の期待が最も大きいのは石破だ。読売新聞の世論調査では、岸田の人気は取り沙汰されている他の政治家よりかなり低い。

newsweekjp_20240806033048.jpg

党総裁選への出馬がささやかれる(左から)高市早苗、河野太郎、石破茂 FROM LEFT: ISSEI KATOーREUTERS (2), KAZUKIOISHIーSIPA USAーREUTERS

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中