最新記事
パレスチナ

イスラエルにも受け入れ可能な「ガザ戦争」の和平のシナリオ...水面下で動き出した「希望」への道筋

Reason for Hope in Gaza

2024年2月22日(木)17時21分
ダン・ペリー(ジャーナリスト)、ギレアド・シェール(1999年の和平交渉のイスラエル代表)
サウジアラビアを訪問したジョー・バイデン米大統領

ジョー・バイデン米大統領は中東の安定化を目指し、2022年7月にサウジアラビアを訪問した AP/AFLO

<イスラエルとパレスチナ双方が受け入れ可能な「2国家共存」に向けた具体的プロセスがひそかに策定されている>

イスラエルは昨年10月7日に起きた虐殺のショックで今も大揺れに揺れ、パレスチナ自治区ガザは瓦礫の街と化し、この地を実効支配するイスラム組織ハマスは人質の解放を拒み続けている。この状況では中東の明るい未来など描けそうにない。

しかしメディアは伝えていないものの、水面下では和平への道筋を探る動きがあり、希望を持っていい理由がある。

ここで紹介したいのは、イスラエルとパレスチナ、西側の専門家がこの数週間協議を重ねて策定した和平の枠組みだ。協議に参加した人たちは全員ではないが大半が元官僚で、過去の和平交渉に関わった顔触れもいる。非常に繊細なプロセスの進行を妨げないよう協議に加わった人たちの実名は伏せるが、策定された枠組みは早晩何らかの形で公式に受け入れられると私たちは確信している。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエルの現政権はこの枠組みを突っぱねるだろうが、政権が交代すればイスラエルにとっても十分に受け入れ可能な内容になっている。現在、欧州各国の政府と米議会が中身を精査中で、近く米政府高官にも詳細が提示される予定だ。

ネタニヤフはハマスの奇襲を防げなかったばかりか、過去1年にわたってはプーチン式の強権支配を固めようとして失敗し、狂信的な極右頼みの政権運営も災いして、その政治生命は風前の灯火となっている。今のところネタニヤフが和平プロセスの進展を妨げているが、失脚は時間の問題だろう。

慎重ながらも今後を楽観視できる大きな理由は、穏健なアラブ諸国が以前からイスラエルとの和解の可能性を探っていたことだ。イスラム教スンニ派諸国の支配層の間では「中東の未来はイスラエルを組み込んだ地政学的構造の構築にある」との見方がコンセンサスになりつつある。

テロの脅威をなくす

このコンセンサスは何年も前から形成されつつあったが、ガザ戦争をきっかけに明確な輪郭を持った。2020年の「アブラハム合意」では、米政府の仲介でアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンがイスラエルと国交を回復した。サウジアラビアはパレスチナ国家の樹立が先決だとして、これに加わらなかったが、その立ち位置は変わったようだ。

専門家チームが策定した和平の枠組みは、交渉の前提としてサウジアラビアなどアブラハム合意に加わらなかったアラブ諸国にイスラエルとの国交正常化に合意することを求めている。一方でイスラエルにも国交正常化と引き換えに、パレスチナ国家の樹立を認めるよう要求している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米消費者信用リスク、Z世代中心に悪化 学生ローンが

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中