中国経済に深刻な課題...今後10年でアメリカ全人口分が退職する「高齢化」で、経済モデル転換にも暗雲
中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。写真は北京の公園を訪れる高齢者。16日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。
2023年の出生率が過去最低となり、新型コロナウイルスによる死亡が相次いだ結果、2年連続で人口が減少。労働人口も大幅に減ることなどにより、政策当局者が懸念する構造的不均衡が悪化する。
中国経済に占める家計消費の割合はすでに世界で最も低い水準にあるほか、年金や高齢者福祉を担う地方政府の多くは数十年にわたる信用による投資主導型成長の結果、多額の債務を抱えている。
ビクトリア大学(メルボルン)政策研究センターのシニアリサーチフェロー、シウジェン・ペン氏は「中国の年齢構成の変化は経済成長を減速させるだろう」と述べた。
今後10年間では、現在50─60歳の約3億人(中国最大の年齢層集団で米国のほぼ全人口に匹敵)が退職する見込みだ。ただ、中国科学院によると、35年までに年金制度が資金不足に陥ると予想されている。
低い定年
中国は定年が世界で最も低い国の一つであり、男性は60歳、ホワイトカラーの女性は55歳、工場で働く女性は50歳となっている。今年は過去最高の2800万人がリタイアする予定だ。
無職のリー・ジューリンさん(50)は、国有企業でキャリアを積んだ夫が27年にリタイアした後、月約5000─7000元(697─975ドル)の年金だけに頼ることに不安を感じている。
リーさんは一人娘の「負担を減らそう」と出費を減らすなど余念がない。「娘が結婚すれば自分の家族を養うだけでなく、(夫婦双方の父母)4人の高齢者の面倒を見ることになる。それがどんなに大変なことか想像もできない」と語る。
中国社会は伝統的に、親が年をとっても子どもが経済的に支え、同居して介護することを期待してきた。
しかし、多くの欧米諸国と同様、急速な都市化によって若者は大都市に移り住み、親元を離れるようになった。自身や政府の給付に頼る高齢者が増えている。
米ウィスコンシン大学マディソン校の人口統計学者、イー・フーシェン氏は、20年には1人の退職者を支える労働者が5人いたが、35年には2.4人、50年には1.6人にまで減少すると予測。「中国の年金危機は人道的大惨事に発展する」と述べた。
日本政府によると、同国ではこの比率が22年に2対1で、70年には1.3対1になると予測されている。しかし、日本は高齢化が加速する以前から高所得国だった。