「迎撃不可能」ロシアの極超音速ミサイルはやはり評判倒れ
Russia's 'Kinzhal' Missile Performance 'Poor' as Jets Patrol Black Sea: UK
キンジャールを搭載したミグ31戦闘機(2022年5月、モスクワ上空)REUTERS/Maxim Shemetov
<キンジャールは「事実上、試験運用の段階にとどまっており、ウクライナでの実績はまだ乏しい」と英国防省>
ウクライナ侵攻が始まってからこのかた、ロシアの極超音速空対地ミサイル「キンジャール」の戦績は今ひとつぱっとしない──英国防省は10月21日、そんな評価を発表した。ちなみにロシアは黒海上空のパトロールにこの「次世代」兵器を搭載した迎撃機を投入すると発表したばかりだ。
キンジャールは「事実上、試験運用の段階にとどまっており、ウクライナでの実績はまだ乏しい」と、英国防省はX(元ツイッター)への投稿で指摘した。
これに先立つ18日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、黒海上空の中立空域において「恒久的な形で」パトロールを開始すると発表した。パトロールはキンジャールを搭載した改良型ミグ31迎撃機で行うという。
キンジャールはロシア語で「短剣」の意で、NATOでは「キルジョイ」というコードネームで呼ばれている。ロシア政府の触れ込みによれば、極超音速ミサイルで迎撃不可能。音速の最大10倍の速度で飛行し、航続距離は約2000キロに達するという。2022年2月の侵攻開始後は、ウクライナに対するロシアのミサイル攻撃の際によく使われるようになった。
実はパトリオットで迎撃可能
ロシアの国営メディアによれば、キンジャールが初めて実戦で使われたのは22年の3月半ば。ウクライナ空軍はロシアがキンジャールをウクライナ領内に向けて発射したと何度も明らかにしているが、ロシアの他の型のミサイルと比べるとその頻度は少ない。
キンジャールは2018年にプーチンによって「次世代」兵器の1つとして発表された。だが西側の専門家に言わせれば、モスクワの「極超音速ミサイル」の触れ込みには誇張があり、ロシアが言うほどに迎撃不可能でもない可能性があるという。
軍事専門家のデービッド・ハンブリングは以前、本誌に対し「どう見てもキンジャールはただの空中発射型の弾道ミサイル」で、本物の超音速兵器と比べると軌道修正能力でも劣ると指摘した。ウクライナ軍もアメリカ製の対空防衛システム「パトリオット」を使ってキンジャールを迎撃したと発表しており、この点は米国防総省も認めるところだ。
極超音速で飛行できて近代的な防空システムをかいくぐることができるというのだから、キンジャールは「紙の上では確かに高性能だ」と英国防省は言う。一方で「ただしそれだけの性能を発揮するには運用面で大きな改良が必要だろう」と英国防省は指摘する。