イスラエルで司法改革案可決、最高裁の権限制限へ 抗議デモは国会前から全国に拡大

イスラエル国会は24日、ネタニヤフ首相が推進する司法制度改革の関連法案を可決した。エルサレムで撮影(2023年 ロイター/Amir Cohen)
イスラエル国会は24日、ネタニヤフ首相が推進する司法制度改革の関連法案を可決した。最高裁が「不合理」と判断した場合に政府の決定を無効にする権限をなくすなど、最高裁の権限を弱める内容が含まれており、司法の独立性を脅かすとして懸念されている。
野党議員は採決を抗議のためボイコットし、法案は賛成64、反対0で可決された。採決直後、政治監視団体や野党の中道派は最高裁に上告する構えを鮮明にし、主要労組はゼネストを実施すると警告した。
ネタニヤフ首相は可決後、裁判所は独立性を維持すると表明。11月末までに司法改革を巡り野党と合意に達することを望んでいると述べた。
レビン法相は演説で「司法制度を修正し、政府と国会から奪われた権限を回復するという、歴史的で重要な過程の第一歩を踏み出した」と表明。米国は繰り返し妥協を求めていたが、意に介さないもようだった。
米国家安全保障会議(NSC)の報道官は、イスラエル国会での司法改革関連法案の可決を「残念」と表明。「われわれは民主主義における主要な変化にはコンセンサスを得る必要があると確信している」とし、イスラエル指導部に対し「政治的な対話を通じコンセンサスに基づくアプローチ」に取り組むよう呼びかけた。
採決は抗議デモが継続する中で実施された。この日も早朝から抗議デモが行われ、デモ参加者は国会の前の道路を封鎖。夕方には抗議活動は全国に拡大した。
エルサレムでは数千人のデモ参加者が国会近くの高速道路に集結し、警察ともみ合いになった。また警察によると、イスラエル中部でデモ参加者の中を車が走り抜け、3人が軽傷を負った。
イスラエル国会での採決を受け、同国の金融市場は総崩れとなった。イスラエルの通貨シェケルは対ドルで1.4%下落し、12日以来の安値を付けた。株価指数は3.2%、国債価格は最大1.8%それぞれ下落した。
