最新記事

日本

ロシアと異なる中国の戦術、日本の「防衛費1.5倍」では不十分だ

JAPAN’S MILITARY AWAKENING

2023年1月16日(月)18時05分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

1発のミサイルも発射しないから、そのアクションが国際社会にもたらすコストは最小限にとどまる。だから中国は、欧米諸国から大きな制裁を受けることなく、香港の自治権を骨抜きにすることにも成功してきた。

習はその成功に勢いづき、東シナ海でも同じ戦術を取ろうとしている。

例えば日本の尖閣諸島について、中国は領空・領海侵犯をエスカレートさせている。これに対して日本政府は、自制的な対応に終始してきた。中国を刺激してはいけないからと、歴代防衛相は尖閣諸島を空から視察することさえ控えてきた。

今後トマホークや極超音速ミサイルを手に入れるからといって、日本が中国のハイブリッド戦争にうまく対抗できるとは限らない。

ひそかに、少しずつ、実効支配という既成事実をつくる中国の戦術をくじくためには、ミサイルを獲得・配備する以外にも有効な対抗策を見つける必要がある。

日本が防衛力を大幅に強化しようと動き出したのは歓迎すべきことだ。だが、最新の国家安全保障戦略がうたうように、周辺有事や現状変更の脅威を「排除する」には、日本の得意分野で中国を打ちのめす措置をもっと積極的に講じる必要がある。

©Project Syndicate


221227p16NW_Chellaney.jpgブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、3会合連続 今後の金利動向示

ビジネス

日銀の利上げ見送り、極めてリーズナブルな判断=片山

ビジネス

日産の今期2750億円の営業赤字に、米関税が負担 

ビジネス

米財務長官、年内再利下げに疑問示したFRBを批判 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 6
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中