最新記事

中国

大幅緩和に舵切った中国「ゼロコロナ政策」 現状と今後の予想

2022年12月8日(木)11時47分
新型コロナウイルスの検査を受ける上海の人々

中国政府は新型コロナウイルス感染を徹底的に抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策の大幅緩和を発表した。上海の検査会場で撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

中国政府は7日、新型コロナウイルス感染を徹底的に抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策の大幅緩和を発表した。3年にわたって続けられてきたゼロコロナ政策は経済を疲弊させ、厳しい規制への抗議行動も拡大した。今回の緩和策はどういう意味合いがあるのか。

ゼロコロナ政策は破棄されたのか

中国政府は公式にはゼロコロナ政策を打ち切るとは表明していない。しかし修正措置が実際に講じられているわけで、コロナと人々を共生させる方針へと急速に転換しつつある最も明確な証拠と言える。

保健衛生当局はなお、再び厳格な規制が必要になるかどうか見極めるために死者数の動向を注視しているとくぎを刺している。

一方過去数週間では、広州市や北京市など複数の都市で新規感染者数が過去最多を記録したにもかかわらず、さまざまな政策修正が行われた。

以前にも中央政府は地方政府に対し「一律的な」対応をしないよう通達していたが、おおむねお役所の形式的な通達に過ぎないとみなされていた。現在、各都市は封鎖対象を新規感染者が出た場所を含む街区の丸ごとではなく、集合住宅の当該の建物やフロアにとどめるよう要請されている。

なぜ今軌道修正するのか

ゼロコロナ政策に対する一般市民の忍耐は限界に達し、鴻海精密工業の鄭州にあるアップル「iPhone」製造工場で労働者が暴れだしたり、広州市で暴動が発生したりするなど各地で不穏な出来事が続いたためだ。

また厳しい規制が消費や旅行を妨げ、工場生産や世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱を起こしていることから、過去1年間に公表された中国の経済指標は軒並み低調か、予想を下回ってきた。

ゼロコロナ緩和への備えは

中国政府は最近、高齢者のワクチン接種率を高める方針を打ち出した。幾つかの都市は、カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物股分公司)製の吸入式ワクチンの追加接種を実施している。

政府はワクチン承認作業も加速。国営メディアによると、4日以降に4種類が新たに承認された。13種類が緊急使用向けに準備されているとの報道もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中