最新記事

米政治

惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち

AGAINST ALL ODDS

2022年9月1日(木)13時19分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

220906p62CSK_02.jpg

ガソリン価格が高騰し、米経済の減速が伝えられるなか、11月の中間選挙では共和党の勝利は確実とみられていたが、ここに来て風向きが変わりつつある GEORGE ROSE/GETTY IMAGES

というのも、激戦となる10議席のうち現在民主党が握る4議席は、ジョージア、ニューハンプシャー、ネバダ、アリゾナという、伝統的に国政選挙では共和党が強い州なのだ。

中間選挙では一般的に、大統領の政党(つまり今回は民主党)が議席を減らすことを併せて考えると、4議席のうち2つでも維持できればラッキーだというのが従来の見方だった。

ところが最新の世論調査では、この4州全てで民主党候補が優位に立っている。さらに、ペンシルベニア、ノースカロライナ、オハイオの各州では、引退する共和党議員の後任争いで、民主党候補がリードするか、共和党候補と肩を並べている。

また、伝統的に共和党が強いウィスコンシン州では、現職のロン・ジョンソン上院議員の支持率が著しく低く、中間選挙で敗北する恐れがある。

積もり積もって民主党にとって最高の結果になれば、上院の議席配分は民主党54、共和党46になる。そこまでいかなくても、多数派を維持できれば、バイデンの政権運営にとって大きなプラスになる。

下院は共和党が多数派を奪還するとみられているが、民主党は24年大統領選の際に、中絶や性的少数者の権利、銃規制、移民制度改革などで進捗がないのは下院共和党が妨害しているせいだと主張することも可能になる。

予想外の展開に焦る共和党

共和党は表向き強気の姿勢を維持している。「そんなシナリオは希望的観測にすぎない」と共和党全国上院委員会(NRSC)のクリス・ハートライン広報官は語る。

「われわれは共和党の候補に自信を持っており、投票日が近づくにつれ民主党を取り巻く環境は厳しくなるだろう」

だが、共和党が支持者に献金を求めるメールには、「われわれは負けている」とか「見通しは悪化している」といった悲壮感あふれる文章が並ぶ。

また、党本部はジョージア州の新人ハーシェル・ウォーカー(元アメリカンフットボールのスター選手)ら頼りない候補にアドバイザーを派遣するなど、テコ入れに必死だ。

もちろん投票日までの2カ月間に、まだ多くのことが変わる可能性がある。特にFBIによるマールアラーゴ捜索は今後の展開が注目される。

ただ、捜索の2日後に実施された世論調査を見る限り、一般有権者のトランプに対する見方は既に固まっていて、捜索が投票動向に与える影響は大きくなさそうだ。

この調査では、トランプが大統領在任中に違法行為に関与したと思うと答えた人が58%に上った(無党派では59%)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中