最新記事

米政治

FBIはトランプの金庫の中まで調べた──機密文書、秘密口座、トランプの遺言書も!?

Just the Beginning

2022年8月15日(月)17時50分
マーティン・J・シール(米内国歳入庁犯罪捜査部門・元特別捜査官)

金庫には機密扱いの文書が保管されている可能性が高い。法廷闘争になった場合、トランプ側からの抗議があっても、金庫やそこから押収した文書が根拠となって政府側の主張が通る可能性は極めて高い。

金持ちは金庫の中に、他人から詮索されたくない重要文書を保管するものだ。

FBIが今回探しているのはホワイトハウスから持ち出された機密文書だが、彼らはほかにも金庫で見つけた文書を押収し、持ち帰って分析するだろう。

例えばトランプは、一族が経営する不動産会社トランプ・オーガニゼーションの傘下に多くのダミー会社を所有していることを公表している。だが金庫の中に、未公表のダミー会社に関する記録があったとしたら?

それらの企業や、世界各地の非公表のパートナーとの秘密の取引に使われている非公表の銀行口座の記録もあるかもしれない。

トランプがトルコで大々的なビジネスをもくろんでいることは、メディアで報道されているとおり。彼はスコットランドにゴルフリゾートを所有しているが、それをどうやって維持しているかは分かっていない。

2008年にはトランプの長男ドナルド・トランプJr.が、自分たちのファミリーにロシアマネーが「どんどん入ってきている」と話したことがある。トランプのビジネスには、謎の部分が多すぎる。

外国企業への投資に関する連絡先の一覧や、連絡方法についての記録も、金庫に保管されているかもしれない。過去にトランプ・オーガニゼーションが同社幹部に「帳簿外」の報酬を支払った記録が、同社の不正の証拠として採用されたことを考えれば、ほかの「帳簿外」の記録が保管されていることも考えられる。

トランプの遺言書の写しが金庫に保管されている可能性も考えられなくはない。その添付文書である純資産の一覧は、トランプの毎年の資産報告と一致するだろうか。

マールアラーゴで執行された捜索令状は、トランプに疑いが持たれている犯罪行為について、パンドラの箱を開けたと言える。

今回の捜索令状は、FBIと司法省の両組織で、長官から部下たちに至るあらゆるレベルにおいて徹底的な精査が行われた。そして司法長官の承認を得た上で連邦判事に送られ、執行された。

中間選挙まで3カ月というタイミングも、令状執行を後押しする要因になったかもしれない。この点については、さらに詳しいことが明らかになる可能性もある。

最後に、連邦当局の捜査を監督してきた私の経験から言えることが1つ。捜索令状が別の捜索令状につながることは、全く珍しくない。

©2022 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中