最新記事

台湾

ウクライナ戦争に自らを重ねる台湾 有事の対中国戦術を研究

2022年3月10日(木)18時50分
軍事訓練でM60戦車を走らせる台湾軍兵士

台湾の軍事戦略家は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、巨大な隣国中国が武力による占領の脅威を現実に移した場合の戦術を研究している。写真は台湾での軍事訓練で、M60戦車を走らせる兵士ら。2020年11月撮影(2022年 ロイター/Ann Wang)

台湾の軍事戦略家は、ロシアウクライナ侵攻を受け、巨大な隣国中国が武力による占領の脅威を現実に移した場合の戦術を研究している。

中国軍による異常な動きは報告されていないが、台湾当局は警戒レベルを上げている。

ロシアの精密ミサイル使用や、劣勢ながらも考え抜かれたウクライナの戦術は、台湾の安全保障の専門家の間で大きな関心を集めている。

台湾の蔡英文総統は「非対称戦争」を提唱し、車両搭載型ミサイルなどで軍の機動性を高め、攻撃を困難にすることを目指している。

台湾国防大学の中共軍事事務研究所の馬振坤所長は、ウクライナも同じ考えで機動兵器を使ってロシア軍を妨害したと指摘。「ウクライナ軍は非対称戦法をフル活用してロシアの進攻を食い止めている」と述べた。

また、「ウクライナ軍の実績からわれわれはさらに自信を持つことができる」と強調した。

台湾は自らが開発した対戦車ロケット弾「ケストレル」のほかに、中国内陸に到達可能なミサイルも開発してきた。

国防部は先週、今年は年間のミサイル生産能力を2倍以上の500発近くとする計画を発表した。中には中国内陸部の目標に到達可能とされるミサイルも含まれている。

台湾国防部は、国際安全保障情勢を「綿密に把握している」とし、「軍備と防衛戦闘能力を常に向上させる」ために努力しているが、「挑発的ではない」と強調している。

ウクライナとの違い

ただ、台湾とウクライナの立場には大きな違いがあり、これが安心感につながっている。

例えば、ウクライナはロシアと長い陸上国境で接しているが、台湾と中国との間には台湾海峡がある。

専門家は、台湾は中国の軍事的な動きの兆候を容易に察知でき、数十万の兵士と船舶などの設備の動員が必要な侵攻の前に備えることが可能とみている。

国防安全研究院のアソシエートリサーチフェローの蘇紫雲氏は、台湾に上陸するには台湾海峡を渡る必要があり、中国にとって「はるかに高いリスク」だと指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダウ平均、一時初の4万ドル突破 好決算や利下げ観測

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 8

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 9

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中