最新記事

中国政治

習近平「歴史決議」──鄧小平を否定矮小化した「からくり」

2021年11月14日(日)20時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

こうして鄧小平の独断で中共中央総書記に指名した江沢民は、「金(かね)」によってしか権力を高める道がないため、「金を仲介とした縁故関係」によって中国を底なしの「腐敗地獄」へと持って行った。

その腐敗と闘おうとした胡錦涛を、江沢民はチャイナ・ナイン(中共中央政治局常務委員会委員9人。筆者命名)に送り込んだ刺客によって封じ込め、腐敗をさらに蔓延させてしまった。

したがって習近平が「歴史決議」で「長きにわたって解決したいと思ってきたが解決できなかった難題を解決した」のは鄧小平に対する巨大な批判であり、鄧小平に対する「圧倒的な勝利」なのである。

これが、父親を破滅に追い込んだ鄧小平に対する、習近平の「復習の形」なのである。

少なからぬチャイナ・ウォッチャーは習近平の「歴史決議」には何も書いてないと評しているが、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の真相を知らない限り、習近平の「歴史決議」からは、何も読み取れないだろう。

ということは、習近平の正体を正確に読み解くことは出来ないということだ。

少なくとも『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』を書いた筆者の視点から見れば、六中全会の広報は、書ききれないほどの豊富な情報を含んでおり、興味深くてならない。

鄧小平を希薄化した、笑ってしまうような六中全会公報の「からくり」

実は六中全会公報を読んで、思わず声を出して笑ってしまった「からくり」がある。

というのも、11日に公報が初めて公表された時、筆者はナマで中央テレビ局CCTVの報道を見ていた。

すると、「江沢民」と「胡錦涛」への賛辞に関して、間をおいてから、もう一度類似のことを言ったではないか。

えっ?

なにごと?

聞き間違えたのか、それともCCTVが放送事故でも起こして、壊れたレコードのように同じ場所を2回繰り返してしまったのだろうか?

ひどく慌てて文字版を読んでみたところ、なんと、本当に江沢民と胡錦涛に関しては2回も言っていたことが判明した。

すなわち、「毛沢東→鄧小平→江沢民→胡錦涛→習近平」の順に建国後の指導者の業績を言った後に、もう一度「江沢民+胡錦涛」に関してだけは繰り返して業績を讃えたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中