最新記事

新型コロナ起源

米国務長官「武漢研究所の複数の研究員がコロナともとれる病気にかかっていた」と、WHOの現地調査を後押し

U.S. Says Wuhan Researchers Fell Ill in Fall 2019, Calls for Transparency

2021年1月18日(月)15時51分
クリスティーナ・チャオ

「疑惑の施設」、武漢ウイルス学研究所(2020年5月) REUTERS

<だからコロナウイルスは人工的に作られたと主張するトランプ政権の疑念はどこまで裏付けられるのか>

マイク・ポンペオ米国務長官は、2019年秋に中国の武漢ウイルス学研究所(WIV)で、新型コロナウイルス感染症と同様の症状を呈する疾患にかかった研究員がいたと主張。今回のパンデミック(世界的大流行)の原因についてより詳しい説明を中国に要求するよう、WHO(世界保健機関)に強く求めた

新型コロナウイルスの発生源を探るWHOの調査団は、1月14日に中国湖北省武漢市に到着。当初の予定より数カ月遅れて調査を開始した。AP通信によると、調査団は総勢10人程度のグローバルな研究チームで、メンバーはアメリカ、オーストラリア、ドイツ、日本、ロシアから参加している。

ポンペオは15日に「調査団の重要な仕事への支援」を表明し、「2019年の研究所内の活動」について調査を求める声明を発表した。

「アメリカ政府は、最初とされる感染確認例より前の2019年秋の時点で、WIV内に新型コロナウイルス感染症および一般的な季節性疾病のどちらとも一致する症状を呈した研究者が複数存在していたと信じるに足る理由がある」と、ポンペオは語った。

「これは、WIVのスタッフと研究員には、新型コロナウイルスまたはSARS(重症急性呼吸器症候群)関連ウイルスの感染はなかったというWIV上級研究員石正麗(シー・ジェンリー)の公式発表の信頼性に疑問を投げかけるものだ」

本誌はこの件について電子メールで駐米中国大使館にコメントを求めている。

研究所への根深い疑念

中国政府は積極的な封じ込め政策で国内のウイルス感染を大幅に縮小させているが、アメリカでは政治家を含む多くの人々が、中国は適切な情報を開示せず、初期段階でウイルス感染拡大の深刻さを軽んじる態度をとった、と非難している。

新型コロナウイルス感染症は、2019年12月に武漢市で初めて確認され、その後瞬く間に世界に広がり、1月16日夜の時点で、世界中で200万人以上が死亡している。

中国当局は当初、パンデミックは武漢の生鮮市場から始まったと考えていたが、中国国立感染症対策センターは2020年5月に市場起源説を否定した。「市場も感染拡大の犠牲にすぎなかったことが判明した」とセンターの高福(ガオ・フー)主任は、中国の国営メディアに語った。

当時、ドナルド・トランプ大統領は、ウイルスがWIVで発生したことを示す信頼度の高い証拠を見たと主張した。ポンペオはすぐにトランプの発言を繰り返し、WIV起源説を証明する「大量の証拠」があると述べた。

「これまでのところ、一流の専門家たちは、ウイルスは人工的に作られたと考えているようだ。現時点でそれを信じない理由はない」と、ポンペオは昨年5月、ABCのニュース番組で語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ニューカレドニア、空港閉鎖で観光客足止め 仏から警

ワールド

イスラエル、ラファの軍事作戦拡大の意向 国防相が米

ワールド

焦点:米支援遅れに乗じロシアが大攻勢、ウクライナに

ワールド

南ア憲法裁、ズマ前大統領に今月の総選挙への出馬認め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中