最新記事

コロナショック

オーストラリア経済の長期繁栄に終止符 観光・教育・移民の構造転換が新型コロナで裏目に

2020年7月4日(土)13時59分

サービス業などの回復には時間が必要

オーストラリアでは過去最長の景気拡大が続いていた間に、経済構造をサービス分野主導に転換していた。急成長する中国に豊富な鉱物・コモディティ資源を供給する一方で、工業生産能力は減らしてきた。

結果としてサービス業が国内総生産(GDP)のほぼ3分の2を占めるまでに拡大。新型コロナ感染対策としての国境封鎖とソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保が、とりわけ大きな悪影響を与える経済構造になっている。

シティのグローバル・チーフエコノミスト、キャサリン・マン氏は「観光業依存型経済は、われわれが最も懸念するタイプだ」と述べ、この先製造業は全般的に「V字型」で回復するだろうが、サービス業ないし一般消費セクターは「L字型」の回復、つまり完全な回復にはしばらく時間がかかる恐れがあるとの見方を示した。

負の連鎖

政策担当者も、経済の正常化が「日暮れて道遠し」の感を抱いている。

オーストラリア準備銀行(中央銀行)は、過去最低の0.25%となっている政策金利について、雇用と物価の目標達成に進展が見られるまで据え置くと表明している。

ロウ総裁は「われわれは長い期間、低金利を続ける」と述べ、これから数年間は「ウイルスの影」に悩まされるだろうとも指摘した。

総裁が懸念するのが、移民の流入減少が消費需要を押し下げ、労働需給をひっ迫させるという人口減少の負の連鎖だ。「国民はリスク回避姿勢を強め、お金を借りる気にならない。オーストラリアで人口減少のダイナミクスが進行する」という。

ネパールからの留学生プジャ・バスネットさんは、ウエートレスのアルバイトを失職したことで身の振り方を改めて考えているところだ。

バスネットさんは「過去2カ月間仕事がないまま、ずっと家にこもっていた。貯金も底を突きかけている。外国人なので、(政府の福祉機関である)センターリンク(の給付金)を申請する手段さえない」と嘆く。

L字型回復は失業率高止まり期間を長期化させ、オーストラリア国内では仕事を奪い合う様相がこれから強まる以上、彼女の将来はもっと厳しくなる。

バスネットさんは「本当に先行きが不安。1週間で30-40件の仕事に応募しているのに、何の反応もない」と語った。


Swati Pandey

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「休業要請は慎重に判断」
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界秩序は変化「断絶ではない」、ECB総裁が加首相

ビジネス

シティ、3月も人員削減へ 1月の1000人削減後=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月速報値51.5で横ばい 価

ビジネス

グリーン英中銀委員、インフレ圧力や賃金上昇指標を依
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中