最新記事

東南アジア

比ドゥテルテ長男、マニラの空港「ニノイ・アキノ」の名称変更を提案 大統領選めぐる動きか

2020年6月26日(金)19時31分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2022年大統領選に向けたドゥテルテ戦略か

さらにフィリピンは2022年に大統領選挙を控えている。再選が禁止されていることから現職のドゥテルテ大統領は再出馬できないが、現在南部ミンダナオ島ダバオ市の市長を務める長女サラ・ドゥテルテ氏、今回の空港名変更法案を提出した長男パオロ・ドゥテルテ下院副議長、さらに次男でダバオ副市長のバステ・ドゥテルテ氏などが次期大統領選の候補者として取りざたされている。

提案者のパウロ・ドゥテルテ下院副議長は「新しい空港名は色もなく、政治的立場もなく、フィリピンの玄関口であるということを伝えるためだ」として現在の名称には「色があり」「政治的立場が反映」していることを暗に示唆している。

こうした大統領選に関係した政治的な動機が今回の空港名変更、つまり「反マルコスの象徴、ニノイ・アキノ氏」という名前の変更の舞台裏にある、との見方が有力となっている。

今回の提案に対してレニー・ロブレド副大統領は26日、地元メディアに対して「コロナ対策に一丸となっているこの時期にそのようなことに時間を割くのは間違っている」と改名法案の提案、審議に釘をさした。

かつてのマニラの国際空港は「空港職員による賄賂要求」「預け手荷物に銃弾を潜ませて摘発」「薄暗く清潔とは言えない環境」「空港からのタクシーのぼったくりや強盗」など、東南アジアでも評判の悪い空港に位置付けられていた。しかし近年は新しいターミナルや2015年のターミナル大規模改装で近代的な空港に生まれ変わっている。

提案者の一人ベラスコ議員は地元マスコミに対して「現在の新型コロナウイルス感染の終息の目途がたった後の観光再開に間に合わせたい」としており、早ければ年内にも新空港名が登場するかもしれない。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


【関連記事】
・コロナに感染して免疫ができたら再度感染することはない?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染48人を確認 今月5度目の40人超え
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、PPIはインフレ高止まりを

ビジネス

米アマゾンの稼ぎ頭AWSトップが退任へ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収を「再考」か=報道

ビジネス

米国株式市場=上昇、ナスダック最高値 CPIに注目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中