最新記事

韓国

韓国でまたも「慰安婦問題」 支援団体の不正会計疑惑を91歳が告発

2020年5月18日(月)18時55分
テジョン・カン

毎週水曜日の正午にソウルの日本大使館前で行われる水曜集会(2019年8月) KIM HONG-JI-REUTERS

<被害者女性を支援してきた「正義連」前理事長で、4月の総選挙で当選も果たした著名活動家に疑惑。元慰安婦の告発者は日本大使館前の抗議集会も批判した>

韓国で「慰安婦問題」がまたも話題になっている。ただし今回、批判の矢面に立たされているのは元慰安婦の支援団体、特に長年支援活動を先頭に立って引っ張って来た韓国の著名な活動家だ。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長は、被害者女性支援のための寄付金を不正に流用したとして告発されている。

正義連の前身は1990年に設立された「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)。元慰安婦の権利を擁護し、日本政府の全面的な謝罪と賠償を求める活動を展開してきた。

また、被害女性の権利回復、女性に対する戦争犯罪の告発、アジア全域の平和推進にも重要な役割を果たしてきた。尹は正義連の主要人物の1人で、与党陣営から4月の総選挙に立候補して当選した。

尹への疑惑が浮上したのは、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス、91)が寄付金の使途に疑問を呈したことがきっかけだった。

保守系紙・朝鮮日報によると、正義連は2018年に元慰安婦の権利を訴えるイベントを開催した後、全国にパブチェーン店を展開するディオブリューイング社に約3300万ウォンを支払ったと国税当局に報告した。

だが同社は朝鮮日報の取材に対し、イベントの費用は約970万ウォンにすぎず、そのうち約540万ウォンは寄付金として主催者に返したと答えた。これが事実なら、正義連は税務当局に支出を誇張して報告していたことになる。

正義連がこのイベントに使ったと主張した金額(約3300万ウォン)は、同じ年に直接慰安婦支援に使った金額(約2300万ウォン)よりも多い。

正義連は朝鮮日報の報道に対し、その年に実施した全てのイベントの全ての費用をディオブリューイングへの支出として一括処理したと説明したが、この弁明は正義連の会計処理のやり方に対する疑念を深めただけだった。

騒ぎが大きくなるなかで、注目を一身に集めているのが正義連を長年率いてきた尹だ。野党議員からは国会の議席を返上するよう求める声も上がっている。

過去の会計内容を全て明らかにするよう求める声が高まるなか、正義連は記者会見を開き、尹は会計処理に誤りがあったことを認め、少ない人手で多くの事務処理をこなす市民団体にありがちなことだと説明した。

一方、毎週開催している抗議デモ「水曜集会」について正義連は、今回の疑惑や世論の批判とは関係なく継続する意向を示した。正義連は挺対協時代の92年から、毎週水曜日の正午にソウルの日本大使館前で生存している元慰安婦や支持者らと抗議集会を行い、戦争時の女性に対する暴力の根絶、正義の実現と人権を訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中