最新記事

ヘルス

尿と便から異常を察知して知らせるスマートトイレ

Smart Toilet That Can Detect Disease in Urine and Feces of User Created

2020年4月7日(火)19時28分
ハンナ・オズボーン

本人は何もしなくても、あとはトイレがやってくれる Artem Ermilov/iStock.

<個体識別、撮影、検体採取、分析、アラート等々を一手に処理するスマートトイレの元祖は、実は日本製だった>

人間が落とした便や尿から収集したデータから病気を発見する「スマートトイレ」が、アメリカの科学者によって開発された。

スタンフォード大学の研究者を中心とした研究チームが開発したのは、普通のトイレに設置できる装置。試験紙やビデオカメラなど多くの機能が組み込まれており、トイレを使用した人の排せつ物の特徴を分析する。

このスマートトイレの詳細は、学術誌『ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング』で発表された。研究チームが目指すのは、使用者の健康を観察し、異常があれば通知して、病気の予防や予測につなげられるトイレだ。大腸癌や泌尿器癌などを発見できるという。

病気の予防・発見を助けるスマート機器はますます普及が進んでおり、市場は急速に動いている。

2020年2月にはイギリスで、ウェアラブル機器を活用してアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の兆候を見つけることを目指す世界的な取り組みが立ち上げられた。デジタルヘルス技術を使って、神経変性疾患のリスクがもっとも高い人々を見きわめ、早期発見率を上昇させることが狙いだ。

期待大のスマート健康機器市場

また、アメリカ心臓学会が発行する学術誌『Journal of the American College of Cardiology』でこのほど発表された研究から、活動量計(フィットネス・トラッカー)やスマートウォッチ、スマートフォンなどのモバイル健康機器を使えば、不整脈の原因となる心房細動の患者を検診・発見できることが明らかになった。

スマートトイレを使って健康観察を行おうという考えは、いまに始まったものではない。日本のトイレメーカーTOTOは、早くも2000年代に、尿糖値とホルモン濃度を測定できるトイレを開発している。しかし、当時はそうした製品の需要はあまりなかった。

2019年3月には米ロチェスター工科大学の研究チームが、トイレを使った心臓血管監視システムを開発したと発表した。このトイレの便座は、心拍数や血圧を計測できる。うっ血性心不全の患者に提供し、収集データを分析すれば、病状が悪化した際に医師に警告が行く仕組みだ。

このたび発表された最新トイレは、ほかのスマートトイレよりも先を行く設計がなされている。使用者の尿や便からデータを収集する方法が多様なのだ。「このアイデアは15年以上も前から存在している」。論文の責任著者で、スタンフォード大学医学部教授兼放射線科長のサンジブ・ガンビールは声明でそう述べた。チームはすでに、被験者21名による予備研究を終えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中