最新記事

グーグル

個人データを集め続けてGoogleはどこに向かうのか 

2019年5月10日(金)18時40分
佐藤由紀子

Google I/Oで講演するスンダー・ピチャイCEO -YouTube

<Googleの開発者向けカンファレンス「Google I/O」が開催された。個人情報の収集をめぐって、Appleを強く意識する様がうかがわれた>

Googleが、毎年恒例の開発者向けカンファレンス「Google I/O」を今年も5月7日に開催した。開発者向けではあるが、オープニングの基調講演は企業としての姿勢や方向性が見えるので、Googleの今後の展開を垣間見ることができ興味深い。

スンダー・ピチャイCEOは今年、「Googleは人々が答えを見つけることを助ける企業から、物事を成し遂げるのを助ける企業にシフトする」と語り、今年のテーマとして「Building a more helpful Google for everyone(すべての人々のためにより役立つGoogleを構築する)」を掲げた。

ネット検索サービスからスタートした同社は、今やスマートフォンやAI搭載スマートスピーカーなども手がけ、人々の日常生活に入り込んでいる。こうしたサービスや製品を通じて、人々の目的達成をサポートしていくというのだ。

個人情報重視の方針打ち出すAppleを強く意識

Googleはユーザーに最適なサービスを提供するために(そしてもちろん、最適な広告を表示するために)、サービスを利用するユーザーの個人情報を収集している。こうしたデータは、「Google翻訳」の精度を上げたり、「Gmail」で適切なスマートリプライを表示したりするための機械学習モデルの訓練に生かされている。

Facebook上で稼働するクイズアプリで集められた個人情報が2016年の米大統領選で悪用されたとされるケンブリッジ・アナリティカ・スキャンダル以来、Facebookだけでなく、GoogleやAmazonなどのいわゆるプラットフォーマーによる個人情報収集に対する懸念が高まっている。

Googleは今年のGoogle I/Oで、こうした懸念に応えるように、プライバシーの取り組みについての説明に大きく時間を割いた。ピチャイ氏は「プライバシーは特別で、高価なものではなく、すべての人々のためのもの(for everyone)であるべきだ」と語った。これは、最近iPhoneの高度なプライバシー機能を謳ったテレビCMを流しているAppleへのあてつけともみえる。

Appleの製品は個人データを収集せず、プライバシーを尊重しているが、いずれもかなり高価だ(Googleは、iPhoneの半額以下でGoogleの各種サービスを利用できる「Pixel 3a」を発表した)。

常にiPhoneを意識するGoogle

Appleもプラットフォーマー「GAFA」の1社とされているが、広告表示や商品レコメンドのためにユーザー情報を集める他の3社と異なり、収益の多くはハードウェア販売によるものだ。Appleのティム・クックCEOは以前から個人情報をマネタイズに利用することを批判している。

Appleの公式サイトにはiPhoneのプライバシーというページがあり、「Apple製品は、あなたのプライバシーを守れるように作られています」と謳い、(Googleのように)「優れた体験をするために、あなたのプライバシーと安全を犠牲にする必要はない」とも記している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中