最新記事

中国

トランプ「25%」表明に対する中国の反応と決定に対する中国の今後の動向

2019年5月10日(金)16時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

5月8日、フロリダ州で演説するトランプ大統領 Kevin Lamarque-REUTERS

トランプ大統領が5日、中国への追加関税を25%に引き上げると表明し10日に協議結果が出た。中国はどう反応し、今後どうするつもりか。経緯分析と中国の貿易データから見える今後の中国の動向を考察する。

経緯分析

トランプ大統領は5日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分への追加関税率を10日までに10%から25%に引き上げるとツイートした。8日にはフロリダ州で演説し、「中国が貿易交渉を台無しにした。もし合意できなければ中国は関税を払うことになる」と主張。悪いのは中国で、知的財産侵害や技術移転の強要、サイバー攻撃および中国の構造改革に関して協議してきたのだが、中国が突如、知財権侵害を防ぐための法制定を拒否したことが原因だとしている。

同日、米通商代表部も、(これまでのハイテク製品以外の残りの)2000億ドル相当の中国製品に対して、米東部時間10日午前0時に、関税率を現在の10%から25%に引き上げると官報で公示した。トランプ氏同様に中国側を「これまでの交渉で合意した約束を撤回した」と批判した。

5月8日には劉鶴副首相を筆頭とする交渉団が訪米して通商交渉を始めることになっていた矢先の出来事だった。

これに対する中国の対応に関する経緯を見てみよう。

1.5日のトランプ氏のツイッターに関して、中国外交部の耿爽(こう・そう)報道官は6日、「同様の状況は以前から何度も出現しており、中国の立場は明確だ。中米貿易協議はこれまで10回も行なっており、積極的な進展を見ている。当面の急務として、われわれはこれまで通り、米側が中国側同様、相手を尊重しながらウィン-ウィンの協議を続けてほしいと望む」と表明している。

2.7日には中国共産党系メディアの環球時報が「米側の変動に対する最善の回答は落ち着いていることだ」という社説を発表した。その社説では

●アメリカ政府内部に混乱がある。

●中国は協議の内容自身に集中し、アメリカとの無駄な論戦は張らない。

●すぐに合意に至るだろうと期待したのはトランプであって中国ではない。中国はアメリカほどには大きな期待を抱いていない。したがって、どのような結論が出ようと、中国側は制御可能だ。

●ワシントンは、本当は中国と合意に至ることを望んでいる。それでも(トランプの習性として)ゴール前のシュートを蹴って見せたいのだろう。これは明らかにアメリカの焦りを表しているだけだ。

●中国の勢力みなぎる大市場を誰も(どの他国も)コントロールはできない。中国の経済的前途は中国人自身の手の中にある。

などと、論じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、米雇用統計控

ビジネス

FRB、銀行ストレステスト結果26日に公表 32行

ワールド

ガザ学校攻撃、子ども14人含む40人死亡 イスラエ

ワールド

再送-サウジ・エネ相「自主減産縮小の停止・撤回可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり

  • 5

    アメリカ兵器でのロシア領内攻撃容認、プーチンの「…

  • 6

    なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったの…

  • 7

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 6

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 9

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中