最新記事

欧州経済

イタリア、銀行再生に暗雲 政局混乱が生むリスク

2018年6月2日(土)13時24分


不動産価格回復への期待

今回の政局混乱は、不良債権処理を必死に進めている銀行に対して、買い手側がさらに高いリターンを要求するリスクを高め、不良債権売却が停滞することで、大幅な値引きを強いられる可能性がある。

イタリア銀行(中央銀行)は29日、今年の不良債権売却額は650億ユーロになると予想。国内金融機関に対し不良債権の削減を推進するよう促した。

イタリアが抱える不良債権額は、リセッション後のピークだった3600億ユーロから750億ユーロ減ったものの、依然として、銀行の融資残高の14%前後に相当している。

この数字は近隣スペインに比べると2倍の水準だ。スペインでは、欧州連合(EU)からの支援、堅調な経済成長、不動産価格の回復のおかげで、不良債権処理のプロセスがはるかに急速に進んでいる。

アリックス・パートナーズでマネージング・ディレクターを務めるクラウディオ・スカルドビ氏は、イタリアでは不動産価格の回復が遅れているため、英国、北欧諸国、また程度の違いはあるがフランスでも不動産バブルが進行している中で、投資家が割安なイタリア物件を好む可能性は依然として高いと語る。

ただ、イタリアの不動産市場が回復しているのはミラノやローマといった大都市や観光地に限られており、バノールキャピタルで債券部門を率いるフランチェスコ・カステリ氏は、不動産相場の回復が広がるには、もっと均質な経済成長が続くことが鍵になるという。

「不動産投資は少なくとも5年のタイムスパンで捉えられる。経済は成長していたが、中期的な展望については疑問が残る」と同氏は述べた。

中堅行の苦境

バンコBPM、UBIバンカ、BPERバンカなど中堅規模の銀行は、インテーザ・サンパオロやウニクレディトなどの大手行に比べ不良債権の処理に手間取っているため、政局の混乱による影響を受けやすいと見られている。

最悪の打撃を受けた銀行には、イタリア10位のクレディト・バルテリネーゼが含まれる。

同行は、3月の総選挙前に新株発行で時価総額を8倍に膨らませることに成功しており、その後も株価が35%上昇していた。

だが、総資本に対する国債保有比率が最も多い銀行の1つであり、不良債権の負担も大きい同行の株価は、新規発行株式を発行した際の0.10ユーロに比べ、11%も下落している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中