最新記事

ロシア疑惑

「機密メモ」の公表は、ロシア疑惑に対するトランプの大きな一勝

2018年2月5日(月)19時04分
ダーリア・リスウィック(司法ジャーナリスト)

上院情報特別委員会のヌネス委員長は、トランプ政権移行チームの幹部を務めたことでも知られるトランプびいきだ Jonathan Ernst-REUTERS

<予想通り中身のない文書だったが、国民に情報機関への疑念と民主主義の未来への不安の種をまくことに成功した>

米下院情報特別委員会のデビン・ヌネス委員長(共和党)がまとめた極秘文書、いわゆる「ヌネス・メモ」が2日、公開されたが、大方の予想通り中身のないものだった。

司法省はメモの公開に強く反対し、同省やFBIに事前チェックの機会を与えないままでの公開は「無責任きわまりない」と警告した。だが公開にあたり、ホワイトハウスのドン・マクガーン法律顧問はそうした主張に反応すらしなかった。

FBIも司法省と同様に、メモの正確性に対する「重大な懸念」を表明。にもかかわらず、マクガーン法律顧問はメモの機密扱いを解く理由について、トランプ大統領がこの「データ」を検討し、トランプ陣営に偏見を持ったFBIや司法省の関係者が違法に内情を探ろうとした証拠として、未編集のまま公開することを選択した、と述べた。

メモは主に、FBIが外国情報監視法(FISA)に基づき、大統領選挙中のトランプ陣営で外交顧問を務めたカーター・ページに対する監視の令状を取るにあたり、「データと適切な情報」を提示しなかったと主張。メモでは約1年間にわたってページが監視対象だったことが示されている。ナショナル・レビュー誌のデービッド・フレンチ上級ライターが指摘するように、トランプ陣営への対スパイ活動捜査が2016年つまり「ページに対するFISAの令状の請求前に」始まっていたことも明らかになった。

捜査の根拠の真偽は問わず

ヌネス・メモでは、令状が3度にわたり更新されたことにも触れられている。更新にあたっては本来、監視対象が外国勢力のために秘密の情報活動に従事したという当初の容疑を裏付ける情報が得られたかどうかを判事が判断しなければならない。また、MI6(英国情報部国外部門)元職員のクリストファー・スティールがまとめたトランプ陣営とロシアの関係を記したいわゆる「スティール文書」をメディアにリークしたとして、関係者を非難。ただし同文書の内容を明確に否定することはなく、同文書の提供者たちは偏向しており、令状請求の根拠には値しないと主張するに留まっている。

鳴り物入りで公表されたが、何かを証明するわけでもないこのメモには、いったいどんな意味があるのというのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中