最新記事

シリア情勢

シリアのクルド人をトルコが攻撃、アメリカはどちらに付くか

2018年1月22日(月)19時30分
トム・オコナー

トルコからの越境攻撃に抗議するシリア北部アフリンのクルド人 Rodi Said-REUTERS

<ISIS掃討に貢献したシリアのクルド人も反アサドのトルコもアメリカの同盟相手。だが今のまま放っておけば、同盟相手同士の対立がエスカレートしそう>

シリア内戦におけるアメリカの重要な同盟相手であるクルド人勢力が、もう1つの同盟国、つまりトルコから攻撃を受けている。これによりアメリカはやっかいな立場に立たされている。

トルコ軍は1月19日、シリア北部アフリンへの攻撃を開始した。「オリーブの枝」作戦だ。アフリンを支配するのはクルド人を中心とした反政府勢力のシリア民主軍(SDF)で、アメリカの支援を受けている。攻撃が始まる少し前、アメリカはシリアのトルコ国境地帯にSDF主体の3万人強の警備部隊を創設する提案を行ったが、トルコ政府はこれに強く反発。米政府がこの案を撤回した後もトルコ側の怒りは解けなかった。

トルコはSDFの中核である人民防衛隊(YPG)などのクルド人民兵部隊をテロ組織と考えており、以前からアメリカにたて突くことになっても攻撃対象にするという考えを示していた。

ロイター通信によればトルコのヌレティン・ジャニクリ国防相は「作戦は事実上、国境を挟んだ砲撃によって始まった」と述べたという。また、まだトルコの地上部隊はアフリンに入っていないという。

「シリア北部のすべてのテロネットワークそしてテロ分子は根絶されるだろう。他に道はない」とジャニクリ国防相は述べた。「アフリン中心部での作戦は長くかかるかも知れないが、同地のテロ組織はあっという間に壊滅するだろう」

頼りになったクルド人民兵

トルコ側の言う「テロネットワーク」、中でもYPGは、シリアにおける米国のISIS(自称イスラム国)掃討作戦の主力を担ってきた。米軍率いる有志連合軍がISISへの空爆を開始して1年後、そしてロシアがシリアのバシャル・アサド大統領を支援するために内戦への軍事介入を始めた1カ月後の2015年10月、アメリカの支援でSDFは創設された。反政府勢力の度重なる敗北やイスラム過激派の影響力拡大を受け、アメリカの支援の重心はクルド人勢力へと移っていく。

米主導のISIS掃討作戦はシリア北部で大きな成果を上げ、昨年10月にはISISの事実上の「首都」だったラッカを奪還。トルコはシリア反政府勢力を支援する立場を維持する一方で、自国との国境近くでクルド人民兵の活動が活発化することに神経を尖らせていた。トルコ国内で数十年にわたって分離独立のための武装闘争を続けているクルド労働者党(PKK)との関係を疑ったためだ。トルコは国内でのPKKの活動を禁止している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内

ワールド

FRBの独立性弱める計画、トランプ氏側近らが策定=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中