最新記事

米外交

北朝鮮に加えてイランとも? ワシントンに高まる開戦論

2017年12月27日(水)15時00分
ジョシュア・キーティング

サウジアラビアに撃ち込まれたイラン製とされるミサイルを公開したヘイリー米国連大使 Yuri Gripas-REUTERS

<核開発を加速させる北朝鮮とのにらみ合いが続くなか、今度はイラン封じ込めの主張が強まってきた>

アメリカが北朝鮮を軍事攻撃するなんてあり得ない――そう一蹴するのが難しくなってきている。現実になれば、多数の人命が失われることは間違いない。

これだけでも十分に憂慮すべき事態だが、そこへ新たに浮上してきたのが、アメリカとイランとの武力衝突の可能性だ。

ホワイトハウスは、アメリカには北朝鮮と対話する用意があるというティラーソン国務長官の発言を正式に否定(更迭が近いとされるティラーソンの発言は、政権を代弁したものと考えないほうがいい)。一方でリンゼー・グラム上院議員は、アメリカが北朝鮮を先制攻撃する確率は30%あり、次に北朝鮮が核兵器実験を行えば70%に跳ね上がると、メディアに語った。

彼のようなタカ派議員の意見は、普通なら話半分に聞くべきだ。しかし最近は、北朝鮮に核を使わせない唯一の策は先制攻撃だという考えを表明する政権高官が相次いでいる。

「北朝鮮の話をするトランプ政権の様子は、イラク戦争を前にしたジョージ・W・ブッシュ政権に薄気味悪いほど似てきた」と、ブッシュ政権で国家安全保障会議のメンバーだったコリー・シャキーは言う。

もう1つイラク戦争を思い起こさせたのが、ヘイリー米国連大使が12月14日に行った記者会見だ。彼女は、イエメン暫定政権と対立するイスラム教シーア派武装組織ホーシー派が11月に同国からサウジアラビアに撃ち込んだとされるミサイルの残骸を大げさな身ぶりで見せた。

ヘイリーはイラン製とされるこのミサイルを指して、イランが武器を提供している証拠だと述べ(イラン側は否定)、中東地域の対立をあおっていると非難。「イランの政権がこれ以上、違法行為に関わることは許されない」とし、イラン包囲網を築くことになると明言した。

1月半ばに危機到来?

トランプ政権は今まで、同盟国であるサウジアラビアとイスラエルの見解をことごとく採用し、イランについては封じ込むべき圧倒的脅威と見なしてきた。反イラン政策を唱えるトム・コットン上院議員は、イランとの核合意の不備を補うことを戦略に掲げるホワイトハウスに同調し、「わが国の対イラン政策は、イランの政権交代を主眼とすべきだ」とまで主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓

ビジネス

中国人民銀、国債売買を政策手段に利用も=高官

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ビジネス

米経済、「信じられないほど」力強い=JPモルガンC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中