最新記事

イラン制裁

海外資金頼みのトルコに暗雲 米国の対イラン制裁違反に銀行が関与か

2017年12月4日(月)15時31分

米当局が対イラン制裁違反で起訴したのは9人で、ハルクバンク幹部のほかに元経済相も含まれている。シムシェキ副首相は、この裁判でトルコの銀行が打撃を受けた場合、必要なあらゆる手立てを講じると言明。銀行幹部の中からも影響はないと楽観的な声も聞かれる。

それでも投資家の不安は根強い。イランに対する国際的な制裁は昨年解除されたが、米国は独自の制裁を継続しており、昨年はBNPパリバが90億ドルの罰金処分を受けた。

米国における裁判は、トルコ経済の行方を最も左右することになる。同国は外国資金に依存し、銀行が海外から資金流入の主要経路となっているだけに、銀行の調達が不可能になれば大変な混乱が生じる可能性があるためだ。

短期的に見ればトルコの銀行の資本基盤は十分強く、リラ安でドル建て債の返済が打撃を受ける懸念もない。とはいえ、厳しい調達環境が長引けば話は違ってくる。

フィッチは「外貨準備や為替レート、金利水準、経済成長に重圧がかかる」リスクがあると警告する。これはトルコの外貨準備のかなりの部分を銀行の資本バッファーが占めているためで、それがなくなればたちまちリラが危険にさらされる。実際、アナリストの試算では、総額1170億ドルに上る外貨準備のうち、金と銀行の準備金を除いた「使える」外貨準備は約350億ドルにすぎない。つまり本当にこれだけになれば、もはや中央銀行は急激に利上げする以外打つ手がなく、経済成長に重大な悪影響を与えてしまう。

これまでのところトルコは欧州の金融機関にとって魅力的な融資先であり、銀行の借り換えに問題は生じていない。

ただし銀行の借り入れコストは上昇しており、ガランティ・バンクが先週発表した13億5000万ドルのシンジケートローンの金利は、2016年、15年の借り入れよりも高くなった。

GAMのインベストメントディレクター、ポール・マクナマラ氏は、銀行への懸念からトルコの債券を全て手放した。「トルコの銀行は借り入れが1000億ドル超と巨額で、これを国内向けに貸し出している。銀行の借り入れにストレスが掛かり、状況は急激に悪化している」という。

(Sujata Rao、Ebru Tuncay記者)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中