最新記事

仮想通貨

金融界で存在感増すビットコイン 各国中銀、制御不能「通貨」に苦慮

2017年11月30日(木)18時00分

11月27日、ビットコインなど仮想通貨の急速な普及が各国中央銀行の悩みの種となっている。10月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)

ビットコインなど仮想通貨の急速な普及が各国中央銀行の悩みの種となっている。単なるバブルと冷めた見方がある半面、決済システムに飛躍的な革新が起きて中銀の制御が効かなくなり、金融政策の遂行が難しくなる恐れがあるためだ。

ビットコインは8営業日で50%上昇するなど急騰。中銀は相場が暴落すれば責任を問われるとの懸念も強めており、中銀当局者からは仮想通貨の規制強化を求める声が出る一方で、中銀独自の仮想通貨導入を検討する動きもある。

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁はロイターのインタビューで、「ビットコインの問題は、あっけなくバブルが破裂したときに中銀が無策だったと非難を受けかねない点にある」と指摘。仮想通貨に関連する銀行の動きが規制の見直しを必要とするかどうか把握に努めていると述べた。

世界の仮想通貨市場の規模は2450億ドルで、日銀や米連邦準備理事会(FRB)、ECBのバランスシートに比べて微々たるものだ。

しかし、仮想通貨は中央機関に依存していない。当局の規制下にある銀行や従来型の決済システムは介さず、ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ばれるシステムを使っている。

このためハッカーの標的になりやすかったり、犯罪に利用されたりする懸念がある。また、仮想通貨を運用しているのが公的機関ではなく民間企業であるため、運営会社の経営が破綻したり、システム運用が停止することもあり得る。

こうした弱点を持ち、小売業界での導入も進んでいないため、中銀は仮想通貨を実体経済とは無縁のリスクの高いコモディティ―にすぎないとみなしてきた。

ECBのコンスタンシオ副総裁は9月、ビットコインを17世紀にオランダで起きたチューリップバブルになぞらえ、「投機の手段」と断じた。

仮想通貨による投機が盛んな中国と韓国は、仮想通貨技術を使った資金調達「イニシャル・コイル・オファリング(ICO)」を禁止。ロシア中銀もウェブサイト経由での仮想通貨の販売を禁じると発表した。ECBは昨年、「中銀のマネーサプライ管理に重大な影響を及ぼしかねない」として、仮想通貨の普及を後押ししない方針を示した。

一方、日本では4月にビットコインが法的な通貨と認められ、登録手続きを踏んだ企業にビットコイン取引所の運営が承認された。

ECB、日銀、ドイツ連銀は既に、将来の決済システムでの利用を視野に入れてブロックチェーン技術の試験に乗り出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中