最新記事

中国共産党

新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感

2017年10月27日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

10月25日に顔を現した新チャイナ・セブン Jason Lee-REUTERS

新チャイナ・セブンに関して「習近平の腹心で固めている」といった驚くべき解釈が流布している。全くの見当違いで、むしろその逆だ。では習近平は何をしたのか?そのマジックの種明かしを試みたい。

新チャイナ・セブンと習近平との距離

10月25日、一中全会(中共中央委員会第一次全体会議)閉幕後に、新チャイナ・セブンが党内序列順に習近平・中共中央総書記(64歳)と李克強・国務院総理(62)のあとに続いて姿を現した。内外記者へのサービス行事で、お馴染みの場面だ。

一中全会では習近平は満場一致で再び総書記に選出され、李克強もチャイナ・セブンの党内序列ナンバー2に選出された。

では新しく入れ替わった5人は、実際にはどのような人物なのか。習近平との距離感に焦点を絞って、党内序列順に人物像を軽くおさらいしてみよう。

●党内序列ナンバー3:栗戦書(りつ・せんしょ)(67歳)

1950年8月、河北省生まれ。1976年から河北省石家庄の中国共産党委員会で資料整理などの仕事を始め、1986年には河北省の共青団(中国共産主義青年団)委員会の書記などを経ながら、1998年まで河北省の中国共産党委員会で仕事をしていた。

一方、習近平は1979年に清華大学を卒業した後、中央軍事委員会弁公庁の秘書などを務めた後、1982年から85年まで河北省正定県の中国共産党委員会副書記や書記などを務めた(習近平の人生の歩みに関する詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』第一章~第三章)。この間に県の近くで党の仕事をしていた栗戦書と知りあうことになる。

新チャイナ・セブンの中で、習近平の古くからの友人は栗戦書一人だ。しかも67歳。もし「七上八下」(70歳定年)が守られるなら一期しか務まらない。

●党内序列ナンバー4:汪洋(おう・よう)(62歳)

1955年3月、安徽省生まれ。胡錦濤(前総書記、前国家主席)や李克強と同じく、生粋(きっすい)の共青団派。伯父の汪道涵(おう・どうかん)(1915~2005年)は1991年に大陸と台湾の間の「海峡両岸関係協会」の会長を務めるなど、両岸問題に務めた人物だが、上海交通大学の卒業生であることから、1949年に彼の妻が経営する企業で働いていた江沢民に手を差し伸べ、江沢民を世に出してあげた。このことにおいて、汪道涵は中国という国家に非常に大きな影響を与えたことになる(この経緯の詳細は拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』p.129~136)。

汪洋は習近平の腹心でも何でもない。むしろ2012年11月の第18回党大会のときにチャイナ・セブンに入るべき人材だったが、北戴河の会議のあとに習近平が汪洋を切り捨てて劉雲山を入れた。やむなく4人の国務院副総理の一人(経済担当)に回したくらいで、習近平の腹心とはほど遠い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-イスラエル、近くラファに侵攻 国内メディアが

ビジネス

ECB、追加利下げするとは限らず=独連銀総裁

ビジネス

焦点:企業決算、日本株高再開の起爆剤か 割高感に厳

ワールド

人口減少は日本の最大の戦略課題=有識者の提言で林官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中