最新記事

日本政治

知られざる小池百合子の濃厚アラブ人脈

2017年10月24日(火)17時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

小池は大学卒業後、帰国してアラビア語通訳としてキャリアをスタート。それからは、日本のメディア取材に同行するなどして中東に何度となく赴いた。例えばリビアの最高指導者で、独裁者として知られ11年に殺害されたムアマル・カダフィ大佐とは、日本テレビの特番のコーディネーター兼通訳として初めて会っている。同じく日本テレビの取材で、同じカイロ大学出身のPLO(パレスチナ解放機構)のヤセル・アラファト議長とも面会している。

92年に国会議員に当選してからは、彼女の人脈はさらに広がる。

カダフィとは、国会議員となっていた09年に、日本リビア友好協会の会長として再会を果たしている。小池はこの訪問の直前、ツイッターに「ちなみに、リビアのカダフィ指導者へのお土産はWiiにしました!」とツイートしていた。ただカダフィに会ったことはよく喧伝していたが、同協会関係者によれば特段カダフィと親しくしていた形跡はない。それでも、カダフィ政権崩壊後もリビアに赴き、同国にしっかりと足掛かりを残している。

問われる外交的バランス感覚

イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、クウェート、パレスチナなどについても議員連盟に積極的に参加して、幅広くアラブとのつながりを築いてきた。現地を頻繁に訪れ、アラファトとも再会を果たしている。

大学時代を過ごしたエジプトについても、政府に近いカイロ大学の学長や関係者との関係を維持し、アブデル・ファタハ・アル・シシ大統領とも顔をつないでいる。そうした人脈を小池は、16年に国政から離れて都知事になった後も絶やしてはいない。

今後、国政に進む「小池政治」にもこうした人脈が改めて強みになっていくことは間違いない。

そもそもカイロ大学出身という彼女の異質な経歴は、アラブ圏の国々とやりとりするのにかなりのアドバンテージとなってきた。基本的にアラブ圏で日本の印象は非常に良い(皮肉なことに日本赤軍がイスラエルで起こした72年のテルアビブ空港銃乱射事件がその印象に貢献している)。その上でアラビア語が使えることは、かなりのアピール材料になっている。

日本にも幅広い中東コネクションが存在する。アラブ諸国の在日大使たちは、小池が主要な役職に就任するたびにこぞって表敬訪問を行い、支援の意を示してきた。これは小池でなければあり得ないことだ。日本が石油輸入の8割を依存する一方で、日本の政治家で中東と広い人脈を持っていたり、パイプを太くすることに熱心な人物は少ない。

ただ現在の政局を鑑みると、こんな懸念も出てくる。小池は以前、民主党政権時代に中東外交の存在感がほぼ失われてしまったと真っ向から糾弾していた。中東関係者の間では今、その民進党と「希望の党」が合流する事態に一抹の不安を覚える向きもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中