最新記事

ノーベル賞

なぜノーベル平和賞の受賞者は、その後に世界の「失望」を招くのか

2017年10月4日(水)10時45分

9月27日、祝福してくれた支持者の多くを落胆に導いたノーベル平和賞受賞者の長いリストに、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が新たにその名を連ねた。写真は同じく平和賞を受賞した旧ソ連のゴルバチョフ氏。5月、モスクワで撮影(2017年 ロイター/Sergei Karpukhin)

祝福してくれた支持者の多くを落胆に導いたノーベル平和賞受賞者の長いリストに、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が新たにその名を連ねた。恐らく彼女が最後ではないだろうという点が、10月6日にも発表される今年の同賞受賞者に向けた苦い教訓だ。

スー・チー氏に対しては、同じくノーベル平和賞受賞者である南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教を含め、国際的に多くの批判が寄せられている。

国連がミャンマーのラカイン州で発生していると主張する大量虐殺、レイプ、集落放火を阻止するために十分な行動に欠けているためだ。こうした暴力によって、42万人を超えるムスリム系少数民族ロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに逃げ込んでいる。

ノルウェー・ノーベル委員会が1991年、スー・チー氏に平和賞を授与し、彼女の「民主主義と人権を求める非暴力の戦い」を讃えた当時と比べると、大きな変化だ。とはいえ、一度与えられた賞が取り消されることはない。

「受賞者が批判を受けるという事態は過去に何度も起きている」と語るのは、1990年から2014年までノルウェー・ノーベル委員会の事務局長を務めたゲイル・ルンデスタッド教授だ。

一部の受賞者がその理念にそぐわなくなったとしても、賞はいつまでも有効だ、とルンデスタッド元事務局長は言う。「アウン・サン・スー・チー氏は、ビルマとアジアの多くの地域における人権にとって、非常に重要な代弁者だった。その事実を彼女から奪うことはできない」

ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者アルフレッド・ノーベルによって創設されたが、彼の資産の一部は武器の製造や販売によって築かれたものだ。900万スウェーデン・クローナ(1億2400万円)の賞金が与えられるノーベル平和賞は10月6日に発表され、単数もしくは複数の個人・団体に与えられる。

だが、これまで平和賞受賞者の多くが戦争を開始したり、それをエスカレートさせたりした例が相次いでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナへのトマホーク供与検討「して

ワールド

トランプ氏、エヌビディアのAI最先端半導体「他国に

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 12四半期連続で

ビジネス

米、高金利で住宅不況も FRBは利下げ加速を=財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中