最新記事

中国社会

安全よりスピード重視 中国、食事のデリバリーブームで事故急増

2017年10月3日(火)08時45分

9月28日、中国では食事の出前サービスがブームとなっている。推定約300万人に上る配達員の多くが、静かな電気スクーターか三輪バイクを運転しており、彼らによる交通事故が急増している。写真は21日、北京で配達に出かけるEle.meの配達員(2017年 ロイター/Thomas Peter)

あざやかな青いジャケットを着たフードデリバリー配達員の運転するスクーターが、雨で滑りやすくなった路面を、混雑した交差点に突っ込み、曲がろうとしていた車に衝突。ドライバーは路面に投げ出された──。

これは中国の警察当局が、配達員のスピードの出し過ぎを注意するため、サイトに掲載したビデオの一場面だ。

中国では食事の出前サービスがブームとなっている。推定約300万人に上る配達員の多くが、静かな電気スクーターか三輪バイクを運転しており、彼らによる交通事故が急増している。

警察当局が注意喚起に乗り出すなか、配達ドライバー自身からも、安全よりもスピード重視のプレッシャーにさらされているとの不満が聞こえてくる。

「ラッシュアワーは、いつも事故が起きる。友人は車にはねられ、2カ月働けなかった」と、北京で配達員をしているZhangさんは言う。

中国のオンライン出前市場は、電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングスやネットサービス大手騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>が支援するサービスが主導している。国営の中国インターネット情報センターの報告書によれば、今年前半には利用者が41・6%増加し、3億人に達した。

上海では、出前配達員が絡む死傷事故が、今年前半だけで76件発生し、警察当局は8月、大手デリバリー各社に対して交通安全基準の改善を求めた。

上海警察当局によると、デリバリーサービス最大手「美団外売」と「Ele.me(餓了麼)」のドライバーが引き起こした事故が、全体の事故件数の4分の1を占めた。

このニュースは全国的な反響を呼び、警察やメディアは一斉に業界を非難するようになった。

南京市の警察は20日、配達員が絡む事故が今年前半だけで3000件以上に達したことを受け、フードデリバリー各社と面会。事故の9割以上は、配達員側に落ち度があったと、国営メディアは報じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:中国の再利用型無人宇宙船、軍事転用に警戒

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 8
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 9
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中