最新記事

中国

いいかげんな中国検閲、英ケンブリッジ大への遮断リストで浮き彫り

2017年8月30日(水)12時23分

8月23日、だが中国検閲当局の実態は、潤滑油の効いた機械にはほど遠く、バラバラで、欠陥や回り道、さらには官僚の性急な仕事ぶりのせいで機能が損なわれていると、中国政治を専門とする学者は分析する。写真は北京で開かれたケンブリッジ大学出版局の書籍フェア(2017年 ロイター/Thomas Peter)

1930年代の中国の農村革命家に関する学術研究論文についての古い書評は、中国政府にとって特に避けるべき危険な話題ではない。厳しくなる一方の今の共産党の基準に照らしてみても、だ。

この書評が、英ケンブリッジ大の出版事業を手掛けるケンブリッジ大学出版局(CUP)に対し、中国当局が中国からのアクセスを遮断するよう要請した約300の論文と書評のリストに含まれていた事実は、秘密のベールに覆われている中国の検閲当局の内部論理への手掛かりを与えてくれると、専門家は指摘している。

習近平国家主席は2012年に就任して以降、検閲を強化し、インターネットや市民社会のさまざまな局面で締め付けを強化している。また、学術界やその他機関に対する共産党の権威を高めようとしている。

だが中国検閲当局の実態は、潤滑油の効いた機械にはほど遠く、バラバラで、欠陥や回り道、さらには官僚の性急な仕事ぶりのせいで機能が損なわれていると、中国政治を専門とする学者は分析する。

「一言でいえば、雑だ」と、英ノッティンガム大のジョナサン・サリバン准教授は言う。「記事が検閲され(閲覧遮断の対象に)選ばれた大ざっぱなやり方を見ると、十分な考えをもとに実施されたものではないと考えられる」

学問の自由を懸念する声に押されたCUPは21日、中国当局の要請に従って学術誌「チャイナ・クォータリー」に掲載された一部の論文や書評の閲覧を遮断した決定を撤回した。

中国側の反応は不明だ。教育省や外務省、サイバー担当部門、出版物を管理する部門は、取材の要請に応じなかった。

当局側が閲覧遮断を要請した論文や書評のリストには、1989年の天安門事件や1966─76年の文化革命、チベットや台湾問題、情勢不安定な新疆(Xinjiang)ウイグル自治区など、政府にとって神経質な話題を扱ったものが含まれる。

だがそのリストは、完全にはほど遠いものだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領選、不公正な結果なら受け入れず=共和上院議

ワールド

米大統領補佐官、民間人被害最小限に イスラエル首相

ワールド

ベゾス氏のブルーオリジン、有人7回目の宇宙旅行に成

ビジネス

中国、最優遇貸出金利据え置き 市場予想通り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中