最新記事

イラク

モスル奪還作戦、写真で見るISISとの戦いの恐怖

2017年7月18日(火)19時00分
デービッド・シム

「避難した住民がイラク軍特殊部隊のもとに到着するなり、男性はシャツを上げろと命じられた。体に爆弾を巻いていないことを確かめるためだ。自爆テロはISISの常套手段で、イラク軍兵士は駆け込んでくる住民を押しとどめようと空に向かって銃を撃ち、アラビア語で怒鳴った。写真の父親は取り乱し半狂乱になっていた。彼は半袖のシャツを着て女の子を抱いていたので、ISISと疑われることなく無事難民キャンプに移送されるはずだ」

【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復


ドローンの後にはロケット弾が

webp170714-mosul04.jpg
モスル奪還作戦でISISの拠点に向けてロケット弾を発射するイラク軍(2017年3月11日撮影) THAIER AL-SUDANI-REUTER


<撮影者、サイエル・アル・スダニの言葉>

「攻撃があったのは真夜中、イラク軍がISISからモスルの行政庁舎を奪還しようとしていた時だった。破壊されたモスル美術館の写真を撮っていた時、上空にISISのドローンを見つけた。ロケット弾が飛んでくる恐れがあるため、我々は一斉に地面に伏せた」

「私はその時に手を切り、治療のため皆で車に戻った。イラク軍が私たちには目視できない距離にあるISISの標的を目がけてロケット弾を発射していたので、撮影を再開した。この写真は過酷な戦闘を象徴する力強い1枚になると思った。記者会見とは別世界の本物の戦争を伝えている。現場は100%危険で、写真を送るインターネットもほとんど繋がらない状況だ」

大学も破壊

webp170714-mosul05.jpg
ISISに破壊されたモスル大学の前を歩く人々(2017年4月10日撮影)
.MARKO DJURICA-REUTERS


<撮影者、マルコ・ジュリカの言葉>

「4月10日、ロイター通信の取材班はモスル東部に入った。かつてはイラク北部の教育の中心で、現在は廃墟となった地元の名門校モスル大学について取材するのが目的だった。到着した途端、まずキャンパスの広大さに圧倒され、その破壊の凄まじさに立ち尽くした。少なくとも10の大きな校舎といくつかの小さい校舎が瓦礫になっていた。

「入口を警備するイラク軍兵士たちは、銃を掃除したりお茶を飲んだりしていた。化学学部が入っていた校舎の焼け跡から、備品や器具を運び出そうとしている人々を見かけた。彼らはここで教えていた大学教授で、使えそうなものは何でも回収しようとしていた。掃除をする教授や、絶望している教授もいた。大学がすぐに元通りになる可能性はないとわかっているため、感情的になっていた」

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中