最新記事

米中関係

駐米中国大使とも密通していたクシュナー氏

2017年5月29日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2月4日のCNNは、2月1日にイヴァンカさんが中国大使館に行く前に、クシュナー氏と崔天凱中国大使は、密室で長時間にわたり会談を行ったと書いている。

対中強硬派は権力を削がれ、親中へと誘導されていくトランプ政権

その結果、2月8日(日本時間2月9日)に、トランプ大統領は習近平国家主席宛てに春節のお祝いの電報にかこつけて、1月20日の就任式に習近平からもらった大統領就任の祝賀電報に対するお礼を述べている。そして翌日、安倍首相が訪米する日に合わせて、トランプ大統領は習近平国家主席と電話をして、「一つの中国」原則を尊重すると宣言するのである。

背後にはもちろん、以前コラムで書いた習近平の母校の清華大学経営管理学院顧問委員会の委員で、トランプ大統領の「大統領戦略政策フォーラム」の議長でもあるシュワルツマン氏(ブラックストーン・グループCEO)の存在や、顧問委員会の委員で元米財務長官を務めたこともあるポールソン氏(ゴールドマンサックス元CEO)など親中派米財閥が動いていた。しかし、クシュナーと、クシュナーを操っていたチャイナ・ロビーとさえ言われるキッシンジャー氏の役割を無視することはできない。

こうして4月4日付けで対中強硬策のバノン氏(主席戦略官)は国家安全保障会議の常任委員から外され、同じく対中強硬派のナバロ氏が委員長を務めていた国家通商会議は5月3日に廃止された。代わりに通商製造政策局が設置され、ナバロ氏がトップに就くものの、貿易相手国との交渉は担当せず、ナバロ氏の影響力が低下するのは明らかだ。

バノン氏は解任される前、クシュナー氏のことを「民主党リベラル派に近く、トランプ主義に反する」と非難していたが、バノン氏はクシュナー氏の中に「中共に洗脳された人間」を見ていたのかもしれない。

トランプ政権の中央から、対中強硬派は姿を消し、親中派が幅を利かす方向へと誘導されている。

習近平の狙いは「一帯一路とAIIB」で「世界の覇者」に

習近平国家主席の狙いは、一帯一路(陸と海の新シルクロード)構想とAIIB(アジアインフラ投資銀行)にアメリカを参加させて、世界の覇者になることである。

「日本は対米追従なので、アメリカを取りこみさえすれば日本は必ずアメリカについてくる」と、中国は思っている。クシュナー氏や清華大学経営管理学院顧問委員会における米財閥委員を通してアメリカを懐柔し、先ずは5月14日、15日に北京で開催された「一帯一路国際協力サミットフォーラム」にアメリカ代表を送ってくれることを優先事項とした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米コロンビア大、反イスラエルデモ参加者が建物占拠 

ビジネス

米雇用コスト、第1四半期1.2%上昇 予想上回る

ワールド

ファタハとハマスが北京で会合、中国が仲介 米は歓迎

ビジネス

米マクドナルド、四半期利益が2年ぶり予想割れ 不買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 9

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 10

    日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退──元IM…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中