最新記事

中国経済

「一帯一路」支える中国の低利融資 リスク助長の懸念も

2017年5月17日(水)08時15分

 5月15日、中国の経済圏構想「一帯一路」は、中国の政策銀行による低利の融資が重要な財源となっている。しかし事業性が疑わしいプロジェクトに関与した政策銀行や商業銀行、借り手などにとってのリスクも膨らんでいる。写真は北京で15日撮影(2017年 ロイター/Ng Han Guan)

中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」は、国家開発銀行(CDB)や中国輸出入銀行(EXIM)など中国の政策銀行による低利の融資が重要な財源となっている。しかし事業性が疑わしいプロジェクトに関与した政策銀行や商業銀行、借り手などにとってのリスクも膨らんでいる。

CDBとEXIMが一帯一路に絡みアジア、中東、アフリカで実施した融資は既に2000億ドルに達している。15日に終わった国際会議では、両行がさらに少なくとも550億ドルを融資する予定であることが明らかになった。

両行は一帯一路構想の「最大の障害」(習近平国家主席)である資金面のボトルネックの解消を担っている。

これまでのところ中国政府のおかげで、資金は調達コストが安く、潤沢だ。銀行筋やアナリストによると、一帯一路のインフラプロジェクト向け融資は主に政府間の話し合いで決まっており、金利は商業銀行が設定する水準より低く、返済期間も延長されている。

CDBとEXIMは政府による大量の資本注入、ソブリン債並みの債券利回り、中央銀行の資金供給プログラムへのアクセスなどにより、調達コストが極端に低い。

例えばCDBは政府保証無しでインドネシアに期間40年の特別融資を実施し、高速鉄道建設プロジェクト(52億9000万ドル)の75%を賄った。中銀国際(BOCI)によると、この融資は返済猶予期間が10年間で、60%のドル建て部分の金利は2%、40%の人民元建て部分の金利は3.4%だった。

こうした好条件での融資のおかげで、中国国有の大手製造業者やインフラ開発業者は海外企業との受注獲得競争に果敢に挑める。政府統計によると、中国の中央政府系複合企業102社のうち47社が1676件の一帯一路関連プロジェクトに加わった。受注額は中国交通建設(CCCC)だけで400億ドルに上る。

一方、人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、低コスト融資への依存はモラルハザードや持続不可能性を筆頭に、「リスクと問題を助長する」と警告している。

中国は、多額の融資を行ったベネズエラが経済危機に見舞われるという苦い経験もしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入の有無にコメントせず 「24時間3

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中