最新記事

アメリカ政治

オルト・ライト(オルタナ右翼)の寵児、「小児性愛OK」発言で転落

2017年2月22日(水)18時00分
ジョシュ・ロウ

記者会見で唇を噛むヤノプルス(21日、ニューヨーク) Lucas Jackson-REUTERS

<トランプが絶賛する保守系メディア「ブライトバイト・ニュース」のシニアエディターでオルタナ右翼のアイドル的存在だったマイロ・ヤノプルス。人種差別や宗教差別を撒き散らして人気を得たが、小児性愛を容認するかのような発言ですべてがパアに>

オルタナ右翼の寵児だったマイロ・ヤノプルスは、唇を噛んだ。早くからドナルド・トランプを支持して名前を売り、過激な言動が売り物の彼も、児童の性的虐待を許容するかのような発言が明らかになると、誰にも守ってもらえなかった。

ヤノプルスが出版大手サイモン&シュスターと結んでいた回顧録『Dangerous(デンジャラス)』の出版契約もパアになった。サイモン&シュスターは既にヤノプルスに契約金25万ドルを支払ったが、20日夜の声明で出版契約を取り消したと発表した。

ヤノプルスも自らのフェイスブック・ページで「出版がキャンセルされた」と述べ、この事実を認めた。

ニュースサイト「ブライトバート」を辞めると発表した記者会見(21日、ヤノプルス)


この出版契約が最初に発表されたときは、激しい反発が巻き起こった。それでも、サイモン&シュスターは一貫してヤノプルスを擁護してきた。批判の的になったのは、ヤノプルスが以前から、人種差別や性差別にもとづくコメントや、トランスジェンダーやイスラム教徒に対する憎悪をあらわにした発言を繰り返してきたことだ。ヤノプルスとの契約に抗議し、サイモン&シュスターの出版物の書評を拒否したり、次回作を出版するのをやめる作家もいた。

【参考記事】オルタナ右翼のアイドル、マイロ・ヤノプルスが出版界に投げかけた波紋
【参考記事】alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか

だが20日に児童の性的虐待についてのヤノプルスの発言が広く報じられたことは、とどめの一撃になったようだ。

同意を求めるのは抑圧的?

今回問題になったオンラインインタビューのなかで、ヤノプルスは児童の性的虐待を軽視したような発言をしている。「世間は児童虐待の問題にこだわりすぎだ。大人としての『同意』の上での関係までうるさく取り締まる」

ヤノプルスは「同意」を「恣意的で抑圧的な考え方」と呼んだ。

また、自分が若いころにカトリックの聖職者と関係を持ったことに触れ、その関係を「少年と年上の男性」の間の「成人の儀式」だったと説明した。

ヤノプルスが失ったのは出版契約だけではない。政治団体のアメリカ保守連合(ACU)は、毎年恒例の総会向けにヤノプルスに依頼していた講演をキャンセルした。今はトランプ大統領の首席戦略官になったスティーブン・バノンから引き継いだ保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の職も失った。

【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者

ヤノプルスは、20日にフェイスブックに投稿した長い文章のなかで、「年少者を性的に虐待する大人に対する断固とした嫌悪感を、改めて表明したい」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪賃金、第2四半期は前年比+3.4%で変わらず 公

ワールド

インド首相、来月の国連総会に合わせてトランプ氏と会

ビジネス

仏サノフィの高コレステロール薬、在庫不足で中国供給

ビジネス

午前の日経平均は続伸、連日の最高値で4万3000円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 2
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...気になる1位は?
  • 3
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 4
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 9
    トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.…
  • 10
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中