最新記事

イギリス

前進できない野党の憂鬱:コービン労働党首再選

2016年10月5日(水)17時30分
ブレイディみかこ

政党が選挙に勝つ必要はないのか?

 これは根拠のないことではない。労働党員の間での彼の人気は置いといて、MORIの調査によれば、有権者全体でのコービン党首への満足度は、昨年9月の党首就任時で-3。その後、数字が持ち直したこともあったが、現在は-31だ。労働党支持の有権者の間でも、1年前は+31だったが、今は+1だ。

 興味深いのは、労働党員だけの調査でも、次の総選挙での労働党の勝算は、「勝てるだろう」が35%、「勝てないだろう」が57%。コービンが60%を超える票を獲得して党首に再選されたことを思えば、彼に投票した人の中にも「勝てるわけない」と思っている人がけっこういるということだ。こうした風潮を嘆いているのが、コービンの非公式アドバイザーと言っても差し支えない左派ライター、オーウェン・ジョーンズだった。


 権力を握ろうとするのは「ブレア派」のやることだと信じている人がいるようだ。ブレア派の政策を導入するために政権を取りに行くのがブレア派であり、社会主義の政策を導入するために政権を取りに行くのが社会主義者だろう。

出典:https://medium.com/@OwenJones84/questions-all-jeremy-corbyn-supporters-need-to-answer-b3e82ace7ed3#.bosd7v37f

 7月末の時点で、彼はコービンとその陣営に対する危惧を正直にブログに書いていた(ガーディアンやニュー・ステイツマンの連載枠でなく、こっそりブログに書いたところがなんとも沁みる...)。


 僕は崖を登っていく党に属している気がする。「パーティーを楽しめ!先のことをあれこれ考えるのはやめろ」と彼らは皆、叫んでる。でも僕はなんとかしたい。なんとかして、僕たちがあの崖から落ちることを防ぎたい。

出典:https://medium.com/@OwenJones84/questions-all-jeremy-corbyn-supporters-need-to-answer-b3e82ace7ed3#.bosd7v37f

 一年前、党首選でコービンが勝利しそうだと分かった時に、「労働党は崖の先端から落ちようとしている」と言ったのはトニー・ブレアだった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中