最新記事

中国共産党

人民が党の真相を知ったら、政府を転覆させるだろう――1979年、胡耀邦元総書記

2016年8月31日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

天安門の中央から見下ろす毛沢東(今年は没後40周年) REUTERS

 その死が天安門事件のきっかけとなった胡耀邦・元総書記は、かつて、「中国人民がもし中国共産党の歴史の真相を知ったら、必ずわれわれの政権を転覆させるだろう」と述べていたことを証言した人がいる。演説会場にいた人だ。

胡耀邦の衝撃的な演説――1979年2月

 胡耀邦(1915年11月20日~1989年4月15日)の演説を聞いていたのは、辛●年(しん・こうねん)(●はサンズイに景と頁を並べて書く)(1947年~)という中国共産党史の歴史研究者だ。彼によれば、1979年2月に、文化大革命(1966年~76年)後初めて、北京で「全国長編小説座談会」が開催された。まだ駆け出しの青年作家だった辛氏も招聘されて、座談会に出席していた。出席者は全部で30人ほどであったという。

 すると、会議中のある日のこと、突然、中共中央の講堂に集まるように命じられた。

 新中国(中華人民共和国)誕生以来、数千万人におよぶ無辜(むこ)の民が殺されてしまったのを知っている辛氏は、中国共産党に大きな疑問を抱いていたので、中共の話を聞くのは好きでなかったが、しかし「中国共産党とは何か」に関して十分な知識を持っていなかったので、非常な興味を持って中共中央の講堂に駆け付けた。

 壇上では、当時まだ中共中央宣伝部長だった胡耀邦が、せわしなく右へ行ったり左へ行ったりしながら、演台を力強く叩いていた。

 そのとき胡耀邦は、驚くべき言葉を発したのである。

――もし人民が、われわれ共産党の歴史の真実を知ったならば、人民は必ず立ち上がり、我々政府を転覆させるだろう!

 その言葉を聞いた瞬間から、辛氏は「中国共産党の歴史を研究しよう」と決意したそうだ。

 しかし中国大陸にいたのでは、その思いを遂げることはできない。

 1994年からカナダやアメリカの大学の客員研究員を務めながら、徹底して中国共産党の歴史研究を深めていった。今はアメリカに在住している。

辛こう年氏との出会い

 辛氏が行きついた結論は、筆者が『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いた事実と同じだった。しかし、中共側にも国民党側にも、十分な証拠がない。「これだ!」と決定づける証拠を探しあぐねていたときに、拙著(日本語版)の紹介がイギリスのBBCに載り、VOA(Voice of America)など多くのウェブサイトに転載された。

 自分が長年にわたって探していたものが日本人によって発見されたのを知った辛氏は、ネットの記事に「遂にわれわれの救い主が現れた!」として拙著を高く評価してくれているのを発見した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HDがインド債券部門調査、利益水増しの有無確認

ワールド

英国、難民保護を「一時的」に 永住権取得は20年に

ワールド

トランプ氏、グリーン氏の「身の危険」一蹴 裏切り者

ビジネス

エアバス、中東の小型旅客機は2044年までに2倍超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中