最新記事

ドローン

アマゾン、イギリスでドローン配送の試験飛行へ

2016年7月29日(金)16時30分
高森郁哉

AMAZON

 ネット通販最大手の米アマゾンは7月25日、同社が実用化を目指すドローン(無人機)配送サービス「プライム・エア」に関して、英国政府から試験飛行の認可を受けたと発表した米ニューズウィークなどが報じている。

英国での試験配送の概要

 アマゾンの発表によると、英国運輸省民間航空局(CAA)から受けた認可に基づき、「視認できる範囲を超えた郊外での運用」「障害物を発見し回避するセンサーのテスト」「1人の操縦者による高度に自動化されたドローン複数の操作」という3つの分野で試験が実施されるという。

 場所については、今回の発表では明言されていないものの、アマゾンが英国内の開発拠点を置くケンブリッジ付近で実施されるようだ。7月上旬、同市南東部におけるドローン飛行を注意喚起するノータム(航空関係者への通知)が出されたと、テックウィーク・ヨーロッパが報じた。ノータムの情報によると、飛行テストは10月5日まで実施されるという。

米当局への「外圧」を狙うアマゾン

 プライム・エアが最初に発表されたのは2013年のこと。計画では、総重量25キロ未満のドローンを高度120メートル以下で飛ばし、約2.3キロまでの商品を30分以内に配送することを目指す。

 ただし米連邦航空局(FAA)は、アマゾンの計画に対して慎重な姿勢を保ってきた。2015年春にようやく米国内で試験飛行を許可したが、「操縦できるのは自家用機のパイロット免許取得者に限定されている」ほか、「地上にいる操縦者の目が届く範囲内でしか飛ばせない」など、安全上の観点から厳しく規制されていた。

 アマゾンは、お膝元の米国でプライム・エアが遅々として進まない状況に対し、今回の英当局との提携が圧力になることを狙っている。ニューヨーク・タイムズの記事によると、アマゾンは「英国におけるドローン試験の成功が米国と他国の慎重な規制当局を勇気づけて、規制を緩和してくれることを望む」と述べたという。

本国でセブンイレブンに先を越される

 米国では、アマゾンがFAAに手こずっている間に、セブンイレブンに先を越されてしまった。ほんの1週間ほど前、FAAに承認された初のドローン配送にセブンイレブンが成功したというニュースがメディアを賑わせたのだ。報道によると、ドローンの新興企業フラーティーと提携し、7月中旬にネバダ州リノで、チキンサンドイッチ、コーヒー、ドーナツ、「スラーピー」(シャーベット状の炭酸飲料)を住民の家に届けたという。提携した両社は、ドローン配送サービスをさらに広い範囲へ順次展開していく計画だ。

2015年11月に発表されたアマゾン・プライムエアのプロトタイプ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏の自動車関税、19年の国家安保調査に依拠

ビジネス

カナダ中銀、利下げ決定でも物価下押し圧力は減退と認

ワールド

フーシ派攻撃計画漏えい、ウォルツ補佐官が責任取った

ビジネス

対中関税引き下げも、TikTok巡る合意のため=ト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 5
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    中国が太平洋における米中の戦力バランスを逆転させ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    反トランプ集会に異例の大観衆、民主党左派のヒロイ…
  • 10
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中