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法からのぞく日本社会

選挙の当落を左右する!? 味わい深き「疑問票」の世界

2016年6月14日(火)19時04分
長嶺超輝(ライター)

●『バンド ヒゲ』票が、口元に豊かなヒゲをたくわえた板東成光候補への有効票に。(2006年、香川県高松市議選/最高裁判所第二小法廷2007年2月23日決定)

●『オバマ』票は、尾花正啓候補の苗字の書き間違えとは認められず、無効に。(2014年、和歌山市長選/毎日新聞和歌山版 2014年12月12日)

●出馬に際し、選管に「初代タイガーマスク」を通称として届け出るも認められなかった佐山聡候補だったが、総務省は『タイガーマスク』と書かれた票を、同候補への有効票として扱う方針を発表。(2001年、参院選比例区/朝日新聞2001年7月25日朝刊)

●越谷市内の中川にも出現したアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」フィーバーに沸いていた頃、『タマちゃん』と書かれた票が、正式に、玉生芳明候補への有効票に。ただし、『タマちゃん』の文字のそばに、アザラシっぽいイラストも添えられた票は、他事記載を理由に無効となった。(2003年、埼玉県越谷市議選/読売新聞2003年4月29日)

●世襲の候補が出馬すると、その親や先祖の氏名が多数投じられることがある。偉大だった政治家の支持者たちが、何らかの思いを込めて、あるいは単なる勘違いで書き記すのだろう。それらは非候補者への投票として全て無効となるわけだが、有効票とされた例もあった。昭和初期に大阪の大動脈となる道路、御堂筋を生み出すなどの功績があった元大阪市長の『関一』の氏名が書かれた疑問票が、その孫の候補者「関淳一」への有効票とされたのである。理由は、「"淳"の字を書き忘れたとみるのが相当」(2003年、大阪市長選/朝日新聞2005年11月21日夕刊)

●ふたりの候補者の氏名を半分ずつ混ぜて書けば、案分扱いとなるのが原則だが、野田聖子氏と松田岩夫氏が立候補していた選挙区で投じられた『松田聖子』票は無効。「記載は著名な歌手を指し、いずれの候補者の氏名を記したものではない」との判断(1996年、衆院選岐阜1区/朝日新聞1996年10月22日)

●1票差で落選した堺俊昭候補が、わずかな望みを託して、『ひっこしのさかい』と書かれた票を自分への有効票だと主張した。しかし、県の選管は「ひっこし」を他事記載と認定して無効票にした。(1995年、香川県善通寺市議選/読売新聞大阪版1995年8月23日)

 なお、冒頭でご紹介した、堀江貴文候補に投じたつもりの「ドラえもん」票は、彼の通称「ホリエモン」をさらに勘違いしたものであり、候補者本人から遠すぎて無効となる可能性が高い(参考:読売新聞2005年8月25日夕刊)。

 いよいよ今度の参院選から、いわゆる「18歳選挙権」がスタートする。こういった日本独特の「疑問票ワールド」に触れてみることで、若い有権者にも「選挙って、意外と面白いかも?」と感じてもらえれば嬉しい限りだ。

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