最新記事

サミット

安倍首相が描く伊勢志摩サミット合意、財政出動の合意は無理か

外交ではG7の足並みを揃え、内政では一億総活プランの財源を求められる苦境に

2016年5月10日(火)17時23分

5月10日、安倍晋三首相は、伊勢志摩サミットで主要国に財政出動での政策協調を呼びかけ、自国の目玉政策として子育て・介護を中心にした「一億総活躍プラン」を打ち出す方針。写真はロシア・ソチで6日撮影(2016年 ロイター/Pavel Golovkin)

 安倍晋三首相は、26、27日に開催する伊勢志摩サミットで主要国に財政出動での政策協調を呼びかけ、自国の目玉政策として子育て・介護を中心にした「一億総活躍プラン」を打ち出す方針だ。だが、英、独は財政出動に消極的なうえ、国内での財源問題の調整も遅々として進んでいない。主要7カ国(G7)の政策協調で主導的役割を演じたいと意気込む安倍首相は、内外で不安を抱えたまま、「大舞台」にせり出そうとしている。

財政出動に距離置く英・独首脳

 安倍首相は大型連休中の欧州歴訪で、各国首脳に財政出動を呼びかけた。年初からの市場変動で、世界経済の先行きに警戒感が浮上。大きなショックを回避するためなら、各国の賛同を得られるとの思惑があったもようだ。リーマンショック後の大規模財政出動の後で「金融政策での対応に偏りすぎてきた」(政府高官)との見解から、「3本の矢」のうち、財政出動にも軸足を置く政策スタンスを各国で共有できるはず、との読みが日本政府内にはあった。

 しかし、欧州歴訪では、そのシナリオ実現に「黄信号」が点灯した。財政規律を重視するドイツのメルケル首相との会談で、安倍首相は世界経済の活性化のために機動的な財政出動が必要と伝えたものの、メルケル首相は「構造改革、金融政策、財政政策の3つが必要だ」と述べ、ドイツのこの問題に対するスタンスの堅さが鮮明になった。

 日英首脳会談でも、キャメロン首相は「経済成長には構造改革が非常に重要だ」として、財政出動での政策協調とは距離を置いた。

一億プランの財源調整進まず

 サミット開催まで3週間を切ったが、日本が財政出動の目玉政策として打ち出そうとしている子育て・介護支援を中心にした「一億総活躍プラン」の足元がおぼつかない。具体的な政策を実行するための財源問題をめぐり、政府内の意思統一が図られていないためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で

ワールド

仏大統領、国内大手銀の他国売却容認、欧州の銀行セク

ワールド

米国務長官がキーウ訪問、ウクライナとの連帯示す

ビジネス

米JPモルガン、CEOと会長の兼任廃止求める株主提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中