最新記事

投資

新興市場の回復阻む「3つの不透明要因」

中国の景気減速、そしてブラジル、トルコ、南アなどの政治的リスクも高まる一方

2016年4月1日(金)10時56分

3月30日、これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。写真は株価ボードを見入る男性。北京で1月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。しかし、不透明感が残るなか、資金の戻りは鈍い。

 国際金融協会(IIF)のデータによると、外国人投資家は今年3月、新興国の株式と債券におよそ368億ドルを投じ、流入額はこの約2年間で最高を記録。過去4年間の月間の平均水準を大幅に上回った。

 ただし、2015年の新興国からの資金流出額が約7300億ドルに達したことを踏まえると、新興市場への資金の戻りはごく緩やかだ。

 新興国投資の本格回復には、3つの不透明要因の払拭が必要だ。

 その3つの要因とは、まず、米利上げとそれに伴うドル上昇への警戒感。そして、中国の景気減速、およびその影響がコモディティー(商品)価格や新興市場全体に波及する可能性。最後に、ブラジルやトルコ、南アフリカなど多くの国で起きている政治的なリスクの高まりだ。

 最初の2要因については、今のところどちらも解消されていない。

 たとえば米利上げだが、米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月の利上げ後、追加利上げ実施をためらっているが、最近は一部のFRB当局者がタカ派的な姿勢を示しており、市場を再び動揺させかねない。

 JPモルガンのストラテジストらは、新興市場が向こう3カ月、アウトパフォームすると見ている。ただ、経済情勢は改善しない見通しであり、新興市場の回復は主にポジション調整によるもの、としている。

「新興市場から距離置いている」

 「中国リスク」も無視できない。中国は無秩序な人民元下落の可能性を否定するが、投資家は中国市場について確信を持てないでいる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英総選挙、野党労働党のリードが18ポイントに拡大=

ビジネス

大和証G、26年度経常益目標2400億円以上 30

ワールド

仏警察、ニューカレドニア主要道路でバリケード撤去

ワールド

マスク氏とインドネシア保健相、保健分野でスターリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中