最新記事

中国メディア

中国有力紙の編集者が抗議の辞任、痛烈な辞職届をネットに公開

メディア規制が強化される中、「南方都市報」編集者が挑戦的な辞職届をネットに公開

2016年3月30日(水)16時00分
ルーシー・ウェストコット

強まる言論統制 習近平に辞職を求める公開書簡がネットに表れたた3月上旬には、20人以上が逮捕された David W Cerny-REUTERS

 中国の有力紙の編集者が中国共産党のメディア規制に反発して辞職した。29日、広東省にある「南方都市報」の文化面編集者である余少鐳(ユィ・シャオレイ)が、マイクロブログの新浪微博(シンランウェイボー)に自らの辞職届を撮影して投稿。辞職の理由欄には「あなたたちの姓は名乗れない」と書かれていた。

 これは2月に習近平(シー・チンピン)国家主席が、中国メディアの「姓は"党"である」と言ったことを指している。すなわち、親である共産党に忠誠を尽くし、その意向に従えという意味だ。

 余少鐳の投稿は2時間ほどで消去されたが、BBCがそのウェブ魚拓(キャッシュとして保存されたもの)にリンクを張っている。BBCによると、余は投稿の中で「私も年をとった。長年(党に)跪いてきたが、これ以上は膝が持たない」と書いていた。

【参考記事】党を批判したとして編集担当者を解雇――中国「南方都市報」

 余の投稿には微博の検閲に関する言及もあった。「私の微博を監視し、どの投稿を消すかを上司に報告している人へ。もう安心していい。この数年、心労をかけてしまっていたのなら申し訳ない。あなたの新しい仕事がうまくいきますように」

神経をとがらせる当局

 広州の地方紙である「南方都市報」は、南方日報グループの発行。共産党に許容され得るギリギリのラインを見極めながら報道を続けてきた同グループは、中国で「有数の挑戦的な媒体をいくつも抱えている」とニューヨーク・タイムズは評している。アジャンス・フランス・プレスによれば、余少鐳はこの新聞で16年勤務してきた。

【参考記事】公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?――中国のコラムニスト

 中国ではこのところ、当局が神経をとがらせ、メディア規制を強化している。3月上旬、全人代(全国人民代表大会)の前日に、「習近平は辞職せよ」と勧告する謎の書簡が「無界新聞」に掲載された。無界新聞は新疆ウイグル自治区主管のニュースサイトだ。この書簡を誰が書いたかはわかっていないが、「忠実な共産党員」と署名し、習を独裁者と呼んで、経済運営の失敗を批判していた。この件で20人以上が逮捕され、その家族も身柄を拘束されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予

ワールド

米韓通商協議に「有意義な進展」、APEC首脳会議前

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 中国「混乱の元凶」望
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中