最新記事

フロン排出抑制法

全国の企業で遅れるエアコン点検義務への対応

担当者も対象機種や具体的な実務を理解していない現状

PR

2016年3月31日(木)11時01分

昨年のフロン法施行で企業の定期的なエアコン点検が義務付けられた zvirni-iStock.

 エアコンや冷蔵庫の冷媒として現在の空調機器に広く使われている「代替フロン」は、オゾン層を破壊する「特定フロン」に代わる物質として90年代以降に急速に普及した。しかしこの代替フロンも、地球温暖化の効果が二酸化炭素(CO2)の数百~数千倍以上もあることがわかり、現在は世界各国でその対応が急がれている。

 昨年4月に施行された「フロン排出抑制法」(以下、フロン法)は、オフィスのエアコンや業務用の冷蔵庫などの空調機器を使う企業に対して、フロンが漏れ出すことがないよう機器を点検・管理することを義務付けている。業務用の空調機器のほとんどがこのフロン法の対象になっているが、実際の企業の対応は遅れている。対象機器のリストの作成や、各企業の管理者の目視による「簡易点検」など、実際にフロン法で定められた実務作業を実施できている企業は全体の2~3割程度と見られている。

 背景にあるのは、フロン法成立を急いだ政府の準備不足があるようだ。周知期間が法施行直前の短期間しかなかったため、制度についての理解が深まらないうちに15年度が始まってしまい、企業の担当者が、フロン法の対応に必要な担当者や予算を確保できなかったケースも多いという。

 空調機器メーカー最大手、ダイキン工業のグループ企業でエンジニアリング会社のダイキンエアテクノは、昨年4月の法施行後、義務付けられた点検・管理を一括して代行するサービスを開始した。同時に全国で一定規模以上の企業の担当者を対象にして、フロン法に基づく実務に関してわかりやすく説明するセミナーを開催している。今年度開催したセミナーは全国で合計約50回、参加人員は2000人に上る。

 法施行後も、企業側が具体的な対応として何をすれば良いのか、またそもそもどの機器が対象になっているのか、理解されていないケースも多い。同社のセミナーに参加した企業担当者からは「初めてやることがわかった」という声が聞かれることもある。

daikin02-02.jpg

ダイキンエアテクノが15年度に開催した企業担当者を対象にしたフロン法のセミナー

顧客企業との密接な関係が新たなソリューション提案を生む

 空調機器の点検サービスを提供するダイキンエアテクノが特にアピールしているのが、空調機器の施工から保守、管理、さらに機器のクリーニングや遠隔監視システムの導入など、様々なメンテナンスを提供できる「ワンストップサービス」の強みだ。例えばフロン法では、企業の「管理者」が3カ月に1回、目視による設置機器の「簡易点検」の実施を義務付けているが、空調機器の特徴を知り尽くしている同社であれば、最初から目視の点検が実施しやすいように機器を設置するアドバイスができる。

 また点検サービスの技術者が、点検後に企業担当者と「5分間」の会話をして、顧客の細かいニーズを汲み取る「アフターファイブ」というサービスを心掛けている。「点検を通じて顧客企業との繋がりができれば、店舗内のLED照明や給湯システムなど、空調機器とは別の設備のご提案もできる」と、ダイキンエアテクノ広報担当者は話している。

 同社ではこの4月からの16年度に、全国で年間100回以上のセミナーを開催する予定で、フロン法の内容と実務に関してあらためて企業への周知を図ることにしている。フロン法に基づく空調機器の点検サービスは、世界的に急務となっている温暖化対策の一環ではあるが、同時にダイキンエアテクノにとって、顧客企業の様々なニーズを掘り起こして新たな提案へと繋げるビジネスチャンスにもなっている。

フロン排出抑制法について詳しくはこちら

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中