最新記事

金融

英国のバンカーが陥るストレス地獄

2016年2月16日(火)18時03分

 銀行内のカウンセラー設置、メンタルヘルスの「応急処置」コース、トレーダーのためのヨガレッスンや、さらに包括的に精神面をケアするプランなどが設けられている。

 HSBCは、ストレスに関連する病気を減らすため、数多くのイニシアチブを取っているとし、「全行員とその家族に対する包括的なメンタルヘルスの福利厚生がある医療保障制度を提供することなどが含まれる」としている。

 英安全衛生庁(HSE)の統計では、金融サービスの職は他の平均的な職と比べ、ストレスに関連した病気にかかる可能性が44%高いことが示されている。故に、同業界の雇い主は欠勤によって財務にもたらされる打撃をコントロールする措置を講じている。

 生保大手メットライフによれば、「グループ・インカム・プロテクション(GIP)」として知られる保険商品に対する需要が、金融セクターの雇い主の間で着実に高まっているという。

 メットライフ(英国)のトム・ゲイナー氏は、平均的な雇い主は従業員の病欠にかかるコストに備え、年間給与の1─1.5%に相当する額を保険に充てていると話す。

 「英国では、約12─13%の企業がGIPに入っており、銀行に絞るとその割合は100%に近い。入っていない投資銀行を私は知らない」

メットライフの中核市場である米国のデータによれば、精神疾患を患う従業員が理由で保険請求をする投資銀行は、他の加入企業よりも最大30%多いという。

危機の人的損失

 2013年末までの政府データによると、ロンドンの金融街シティにおける人口10万人当たりの自殺率は2009年以降、同市の他地区を凌駕(りょうが)している。

 「問題の一部は、この業界が常に人を削減していることだ」と、30年以上のキャリアで何度か解雇された経験のあるバンカーは指摘。今も求職中の同バンカーは「ロンドンはその先陣でもある。ここではいつも解雇される脅威にさらされている」と、匿名を条件に語った。

 微妙な話題であることから、職場のストレスに悩まされる人たちはロイターの取材を受けたがらなかった。つまりこれは、マネジャーや同僚に話すのを恐れ、報告されていない多くのケースがある可能性を意味する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

内田副総裁が白血病治療で入院、入院期間は数週間の見

ビジネス

新発10年国債利回りが1.705%に上昇 17年半

ビジネス

日本郵政、通期純利益予想3200億円に下方修正 物

ビジネス

ニデック、半期報告書のレビューは「結論不表明」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中