最新記事

中台関係

台湾・蔡英文氏訪日と親中・親日をめぐる闘い

台湾野党、民進党主席の蔡英文が来日で見せた巧みな戦術と、与党・国民党の落日

2015年10月9日(金)20時20分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

次期総統候補 蔡は台湾独立を企んでいる、として中国は警戒 Pichi Chuang-REUTERS

 台湾の次期総統選最有力候補の野党民進党・蔡英文主席が訪日して親日姿勢を強調する一方、馬英九総統は与党国民党の次期総統候補・洪秀柱氏に辞退を勧告。大陸との統一問題に関する発言で、国民が離れていくからだ。

蔡英文氏の「今のうち」訪日

 日中国交正常化に際し、日本は「一つの中国」を交換条件として認めているので、台湾「中華民国」の総裁を日本に招聘することは、激しい中国の反発を招くため、控えてきた。

 次期総統選で最有力候補とみなされている野党民進党の蔡英文主席(58歳、女性)は、選挙前の民進党主席の身分で10月6日に訪日した。

 7日に安倍首相の実弟・岸信夫(自民党衆院議員)が付き添い山口県に行き、8日には都内のホテルで安倍首相と密談した模様。

 日本のメディア(時事通信社など)によれば、安倍首相は8日の正午過ぎから1時間10分にわたり首相官邸近くのホテルに滞在し、実弟の岸信夫自民党衆院議員、山口県の村岡嗣政知事らと会食したと伝えている。これに関し、菅官房長官は8日午後の記者会見で「そうした(会談の)予定はなかった」と説明し、蔡英文主席も取材に対し、日本の対台湾窓口である交流協会の大橋光夫会長と会食していたとして、面会を否定している。

 蔡英文氏側も安倍首相との密談を否定した。

 一方、台湾のメディアは、安倍首相の実弟の自民党衆議院議員である岸信夫氏が蔡英文主席の全行程に同行し山口県山口市と岩国市を案内したあと、8日には日本交流協会とともに東急ホテルの橘の間で安倍首相と会食したと報道している。また、このたびの訪日は、「促進日台経済文化交流青年議員会」の主席である岸信夫・衆議院議員の招聘であるとしている。

 中国(大陸)外交部の報道官は、このたびの蔡英文の訪日活動に断固反対し、日本が「一つの中国」の原則を順守し、「台湾独立(台独)」を唱えるいかなる人にも、いかなる名義をも与えず、台独言論に関するいかなる空間をも提供しないことを日本に要求する、と訪日前から日本を批難していた。

 大陸メディアは、蔡英文氏が「現状維持」という言葉で「台独」を覆い隠し、「民間交流」の衣を着て、実際は政治活動を行なっていると、非常に攻撃的だ。その証拠として、「なぜ「山口県を訪問しなければならないのか?」「山口県には下関市があり、そこで屈辱的な下関条約を結んだことを忘れたのか?」「山口県は安倍首相の出身地であることが、安倍首相との関連を象徴している」などを挙げている。新安保法案が日本の国会を通ったことに関連させて、台湾の安全保障問題を「親日」「媚日」により保障しようとしていると激しい。

馬英九総統、次期総統候補・洪秀柱に辞退を勧告

 国民党の馬英九総統が北京政府寄りという理由で支持率が低迷し、昨年末の統一地方選挙で国民党が惨敗した。それを受けて馬英九は国民党の主席辞任に追い込まれ、痛い思いをしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師、攻撃後初めて公の場に 

ワールド

ダライ・ラマ「130歳以上生きたい」、90歳誕生日

ワールド

米テキサス州洪水の死者43人に、子ども15人犠牲 

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 中間選挙にらみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中