最新記事

シリア

ロシア参戦で錯綜するシリアの空爆地図

シリアを空爆する国は今や13カ国。いったいどの国が誰を攻撃しているのか?

2015年10月2日(金)17時45分
ジャック・ムーア

無差別攻撃も ISISが制圧しかけた国境の町コバニを有志連合が空爆(14年10月) Umit Bektas-Reuters

 ロシア国防省は30日、シリア領内で空爆を開始したと発表、米当局もこれを確認した。4年半に及ぶシリア内戦には既に多くの国々が関与しているが、ロシアの参戦により事態はますます錯綜してきた。

 米欧を中心とした有志連合の空爆の標的はISIS(自称イスラム国、別名ISIL)だが、一方ではシリアのバシャル・アサド独裁政権と戦う穏健派の反体制派への軍事支援も行っている。ロシアの標的は「テロリスト」ということになっているが、それが誰を指すのかは明らかにしていない。ISISが標的であれば問題はないが、反体制派を攻撃して盟友アサドの延命を図り、シリア国内にもつ軍事施設など自国の権益を守るのがロシアの目的なら、有志連合とまともにぶつかり合うことになる。

 先週から空爆に加わったフランスも合わせると、今年シリアを空爆した国は13カ国になった。どの国がシリアの誰を攻撃しているのか、その思惑は何なのか、国別に整理してみよう。

ロシア

 ウラジーミル・プーチン大統領は議会の承認を受けてシリア空爆に踏み切った。ホムス、ハマ、ラタキアが攻撃されたと、シリアの情報筋がAFPに語っている。反体制派組織「シリア市民防衛団」によると、ホムス市内では子供3人を含む民間人33人が死亡した。

 ロシア国防省筋は空爆の標的はISISの拠点だとBBCに語ったが、米当局によると、ロシア軍はISISの支配地域には攻撃を行っていないという。シリアの反体制派の拠点を集中的に攻撃したとみられる。標的には穏健派も含まれ、欧米が支援している組織の拠点が攻撃された可能性もあるという。ロシアがシリアの反体制派をたたき、アサド政権の延命を図るために介入したのは明らかだ。

アメリカ

 米政府は昨年9月に英ウェールズで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で多くの国々の合意をとりつけ、ISISと戦う有志連合を発足させた。米軍はイラクの基地とペルシャ湾に展開する空母から戦闘機や無人機を発進させ、ISISのインフラや戦闘員を攻撃してきた。アサド政権とシリアの穏健派の反政府組織は標的にしていない。ただし今年7月には、米軍が訓練を行っている反体制派の基地を攻撃したアルカイダ系列の武装集団アルヌスラ戦線に空爆で応戦した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中